3兆円の市場規模を持つともいわれる国内コーヒー市場で最大手のネスレ日本が、事業規模で「コーヒー超え」も狙えると期待を示す新たな事業がある。それが「ネスレ ウェルネス アンバサダー」を核とするヘルスケア市場での取り組みだ。健康を意識した食品やサプリメントは巷に溢れるが、ネスレ日本はある問題点に気づいた。

  • 抹茶を入れるマシンと抹茶カプセル
  • 抹茶を入れるマシン
  • 栄養素の入った抹茶あるいはミルク(あるいは両方を合わせた抹茶ラテ、画像右)をマシンで入れて飲む「ネスレ ウェルネス アンバサダー」

平均寿命と健康寿命のギャップに目をつけたネスレ日本

ネスレ日本は栄養診断ができるサービスと栄養素が入った飲み物を武器にヘルスケア市場を開拓する。飲み物はカプセルで購入し、コーヒーのようにマシンで入れて飲む。先にマシンを売るか無償で貸与してから、そのマシンで作る中身(この場合は抹茶とミルクのカプセル)を後から定期便で供給するビジネスモデルは、同社が「ネスカフェ」のコーヒーマシンで編み出した手法を別の分野に展開したものだ。ちなみに、飲み物を入れるマシン「ネスカフェ ドルチェ グスト」では、抹茶とミルク以外にもコーヒーやカプチーノといった飲み物を作ることができる。

なぜネスレ日本がこのビジネスに取り組むのか。先日の事業戦略発表会に登壇した同社代表取締役社長兼CEOの高岡浩三氏は、「世界一の食品・ウェルネス企業として、やらなければならないのは、おいしいものをリーズナブルな値段で提供する役割以上に、“健康寿命”を延ばすということ、そこに貢献できるような食生活を届けること」とする。医学の進歩で平均寿命は延びるが、そのスピードに健康寿命、つまり健康に生きられる期間の伸び率が追いついていない。ネスレ日本が着目した日本の問題点だ。

  • 平均寿命と健康寿命の差を示すスライド

    平均寿命と健康寿命にはギャップがある

サプリを服用している人の割合は、日本では30%に達しているらしい。しかし、サプリを日常的に服用している人の中で、実際のところ自分に何の栄養素が足りていないかを把握し、必要なものを的確に摂取できている人は、どのくらいいるのだろうか。なんとなく、自己流の健康診断を自らに施し、その結果に基づき、実は自分にとって不要なサプリを選んでいる人は、意外に多そうな気もする。

「それを我々は、顧客が気づいていない問題と捉えた。ようするに、一人一人への“診断”がない。どんな栄養素が足りないか。足りないとどんな病気になるリスクがあるか(を把握できている人は少ない)。病気になってからの診断はあるが、なる前の診断はない。その診断を先にして、足りない栄養素を補う。さらには病気のリスクを検査して、そのリスクが高い人には、このカプセルを飲んでくださいと(提案する)。お客様が選ぶのではなく、薬と一緒で(飲んでもらうものを)我々が選ぶ。こんなビジネスモデルを立ち上げた」(高岡CEO)

  • ネスレ日本の高岡CEO

    「健康寿命をいかに延ばすかは近々の課題。それは製薬メーカーの仕事ではなくて、おそらく食品メーカーの仕事なのではないか」と語った高岡CEO

ネスレ日本のビジネスが単なるサプリの販売と違う最大のポイントが、事前の診断に基づく各人に合わせた製品の提供だ。例えば抹茶のカプセルには現状、栄養素の配合が異なる8種類を用意している。