世界で2番目のコンセプトストアが日本に
同年10月には、東京・港区の北青山に、世界で2番目となるコンセプトストアのボルボスタジオ青山を開店した。
「スウェーデン本社のホーカン・サムエルソン社長兼CEOに、こういうことをやるべきと直訴した際、ちょうど世界的にダウンタウンストアをやろうと考えていたところだったようで、その1つに東京を指名してもらいました」
「この青山通りを『オートモービル銀座』と私は呼んでいるのですが、プレミアムブランドのディーラーなどが数多く集まっています。それらのほとんどは販売店として開いているとか、あるいは自動車メーカーの展示場で、展示するだけでしたら博物館と同じだと、私は言っています(笑)」
「一方、ボルボスタジオ青山は、お茶を飲みながら、ボルボがスウェーデンのクルマであることを感じて頂ける空間として開設しました。しかし、それだけでは博物館で終わってしまうので、独自の販売方法も取り入れています」
1つは、受注生産の導入である。内外装の色や注文装備を自分の好みで選んで発注する、eコマースによる販売だ。この方式で注文してスマボによるリース契約を結ぶと、車両保証やメンテナンスパッケージ、保険、消耗品の交換などが付帯される仕組みとなっている。月々の支払い以外に、クルマを利用する上で必要となる費用負担を別途で強いられることなく、自分独自の仕様のボルボに乗れる嬉しさや気軽さがある。「同じ青山通りにあっても、他のメーカーとは違う独創的な空間なのでは」と木村社長は話す。
想像力から始まる独創的な経営
社長就任からわずか3年半の間に、次々に展開される木村氏の独創的な発想の原点は、どこにあるのか。
「ビジネスで最も大事なのは、想像力をつないでいくことだと思います。もちろん、現場が大切なのは承知しています。しかし、常に現場にいたり、そこで意見を交わしたりできるわけではありません。ですから、自分が顧客になったつもりで、状況をちょっと見ただけでもそれらをつなぎあわせ、本質を見極めることのできる力が一番大事だと思うのです。お客様第一と皆が言いながら、実は業界の慣習が優先され、お客様第一になっていないところがあります。そこにビジネスチャンスがたくさんあると考えています」
では、本質とは何か。それは、前編の冒頭から木村社長が掲げた「お客様第一と会社最適の両立」である。その実現へ愚直に突き進もうとすれば、おのずとなすべきことが見えてくるということだろう。
ここまで、3年半の取り組みについて聞いてきた。では、今後の課題は何か。
「就任した2014年7月からの半年は、いわば敗戦処理投手みたいな状況で、その後3年間の実績は、対2014年比で2017年には販売で2割増し、売り上げでは4割増しでしたので、プレミアムブランドとして生き残る道筋は付けることができたのではないかと思っています」
「一方で、歯がゆい思いでいるのは、スピードが足りないことです。やるぞ、変えるぞと言っても、日本はなかなか動きません。5年間勤めた東南アジアは、日本の2倍の速度で物事が動きます。行動のスピードが速ければ、例え失敗しても結論が早く得られるので、修正して向上・発展させていくことができます。『スピードではトヨタに勝て』と社内でいっています」