さて、ASUSが赤坂をリアルショップ開店の土地に選んだのはなぜか。ジョニー会長によると、銀座も候補に挙がっていたらしい。だが、銀座は人の流れが大きく、ショップに多くの集客があると、かえってきめ細やかなサービスができない。つまり、来店してきたすべての客に、満足できるサービスが提供できない可能性が生じる。一方、赤坂は銀座に比べれば人の流れは少ないが、土地としてのプレミアム感は十分に高く、多くの企業が集まっており国際色も豊かというのが、白羽の矢が立った理由だそうだ。
そして、なぜリアルショップなのか。PCを購入する際、オンライン通販を利用する人が多い。それを考えると、運営経費がかかるリアルショップは、企業にとって重荷になるのではないか。これに関し、ジョニー会長はこう切り出した。「オンラインもオフラインも販売チャネルとして重要と考えるのが、新しい小売りの概念です」だという。
やはり、客との結びつきを高めていくには、オフラインを軽視するわけにはいかないのだろう。また、オフラインで客に体験してもらうということも重要だとし、それがオンラインでの販売増につながっていくという考えだ。
また、PC販売とサポート体制が一緒になったショップを出店するのは、日本が初めて。ZenBookというブランド名のZenは「禅」からとったという、いかにも日本通のジョニー会長ならではの選択だ。
実際の店舗を見学させていただいたが、とても洗練された雰囲気だ。木製のテーブルの上に製品が並べられているが、広い間隔で置かれているのでゴチャゴチャした感じはまったくない。壁際のラックにはPCやスマホのケースといったオプションがそろっている。製品本体を購入した際に、それにピッタリのオプションを同時購入できるというわけだ。ショップの奥には簡単なイベントや製品活用教室が行えるスペースもある。家電量販店にはないスマートさだ。
さて、こうしたリアル店舗による戦略を加速させてきたメーカーがある。そうアップルだ。2003年に日本初の直営店、アップルストア銀座店を開店してから、2018年3月現在、表参道や心斎橋、名古屋栄などに7店舗をオープンした。そしてiPodやiPhoneなどをヒットさせ、現在ではもっともブランド価値のある企業に成長している(インターブランドジャパン調べ)。
ASUSもリアル店舗戦略を加速させ、客との結びつきの強化し、そしてブランド力向上へとつなげたいに違いない。