2月の土曜日、現地を訪れた。メニューは季節ごとに変わり、この日は地元産の自然薯が食べ放題となる「じねんじょ列車」と、沿線の酒蔵・岩村醸造の銘酒「女城主」が飲み放題の「枡酒列車」の二本立て。列車は3両編成で、一般用、「じねんじょ列車」、「枡酒列車」がそれぞれ1両ずつ割り当てられている。1両の定員は30人で、この日の予約は「じねんじょ列車」が24人、「枡酒列車」は満席の30人と盛況だ。4月になると、看板列車の「寒天列車」と、手軽に参加できる「おばあちゃんのお花見弁当列車」の運行が始まる。

  • 左:枡はそのまま一日乗車券となる。運転士や改札口で枡を見せて乗り降りする光景はなんとも粋? 右:枡酒列車は、「ゑなのほまれ」「女城主にごり酒」「女城主新米一番搾り」などが飲み放題

早朝から提供料理の仕込み

食堂車の準備は、明智駅発恵那行き急行「大正ロマン2号」の車内で行われる。料理は山岡駅併設のレストランと明智のゴルフクラブ、恵那峡の観光ホテルの3社が交代で提供。土曜限定の「枡酒列車」は、花白温泉駅前にある花白温泉の担当だ。複数の業者が担当することで毎日運転を実現し、それぞれが自慢の料理を競うなど緩やかな競争原理が働いている。同じ「寒天列車」でも業者が異なれば細かい献立や味付けが変わり、これもリピーターを増やす要因となっている。

この日「じねんじょ列車」を担当するのは、山岡駅併設のレストラン「山岡かんてんかん」の原田さんと古田さん。朝8時から、店舗で仕込みを行い、山岡駅から食材を積み込んだ。多客時には、早朝6時から準備することもあるという。

「メニューは、みんなで試行錯誤しながら作っています。今日のポイントは、自然薯以外では山岡名物の寒天寿司ですね。こちらの原田さんは寿司名人なんですよ。具が真ん中に来るようにきれいに作ってくださいます」(古田さん)

  • 左:早朝から調理された料理は、ほぼできあがった状態で積み込まれる。山岡駅で積み込まれる「じねんじょ列車」の料理。右:鮎の甘露煮、自然薯の磯辺揚げ、寒天寿司、いなごの佃煮、地元で採れたイチゴなど沿線の味が揃う