2017年、スマホ業界のトレンドと言えば「有機ELディスプレイ」「18:9の縦長ディスプレイ」「デュアルカメラ」だった。アップル・iPhoneを筆頭にサムスン電子やLGエレクトロニクスなど、様々なメーカーが採用。ここ数年、「スマホの進化は止まった」と言われて久しいが、2017年に関しては一気にハードウェア的な進化があったように思う。

そんななか、頑なに進化を拒んできたのがソニー・Xperiaであった。

2017年のXperiaは、デザイン面で小ぶりな変更しかなく、目新しさに欠けてきた。カメラのセンサーこそ進化していたものの、消費者からすれば「使ってみなければわからない機能強化」。もはや、他社から数周遅れた雰囲気すら漂っており、メディアの関心も失いつつあった。

事実、2017年の日本国内におけるAndroidスマホの販売シェアで、長年定位置となっていた1位の座をシャープ・AQUOSが抜き去った。

シャープはこれまで、3キャリア向けに異なるAQUOSを納入していたこともあり、プロモーションやブランド認知が分散していたという課題があった。そこでシャープは、2017年から3キャリア向けに「AQUOS R」で製品名を統一した。さらに、格安スマホ(MVNO)向けに安価な「AQUOS sense」を投入することで、シェア拡大を果たしたのだ。

フレームレスならず、理由は「アンテナ」

"ジリ貧"ぶりが鮮明となりつつあるXperiaは、毎年、2月末にスペイン・バルセロナで開催される世界的なモバイル関連展示会「Mobile World Congress」で、その年のフラグシップモデルを発表している。今年も、どんな製品が発表されるのか注目されていた。

2月26日に発表された「Xperia XZ2」「Xperia XZ2 Compact」は、デザインを大きく刷新してきた。背面に3D曲面ガラスを採用し、丸みを帯び、持ちやすいデザインに生まれ変わった。

Xperia XZ2に関しては、プレスリリースなどの画像ではイマイチな雰囲気もあり、ネットで賛否両論といった状況。ただ、実際に製品を触ってみた限りでは、かなり高級感のある作りで、所有欲を満たしくれるデザインとなっている印象だ。

  • Xperia XZ2

液晶ディスプレイもアスペクト比が18:9のものを採用し、トレンドに乗ってきた格好。ただ昨今、流行している"フレームレス"かと言えば決してそんなことはなく、画面下にSONYロゴをプリントできるほど、それなりにフレームが残っている。

なぜ、ソニーはフレームを残すデザインにしたのか。今のトレンドを追う気が無いのか。それとも技術力がないのか。

率直な疑問を、開発担当者であるソニーモバイルコミュニケーションズ UX商品企画1部 商品企画課の染谷 洋祐氏にぶつけたところ「フレームをなくし、液晶画面にアンテナを近づけると液晶からのノイズの影響受けて、電波の感度が悪くなる。アンテナの受信感度を最優先にするために、この機構になった」という。

今回、MWCの会場では「Xperia XZ2」「Xperia XZ2 Compact」を分解したものが、メディアに公開されていた。確かに画面下部にはアンテナがきちんと配置されている。

  • ソニーモバイルコミュニケーションズ UX商品企画1部 商品企画課 染谷 洋祐氏

  • Xperia XZ2の分解サンプル。確かにアンテナパーツが画面下部に配置されている

ここ最近、世界各国の携帯キャリアはさまざまな周波数帯を利用している上、しかもキャリアアグリゲーションで複数の周波数帯を束ねて高速化させていることもあり、アンテナの感度が今まで以上に重要度を増している。特にソニーがメインに相対しているのは、品質管理に厳しい日本の携帯キャリアという点も無縁ではないだろう。