一般的に、自治体は固定費をかけることを嫌がる。短期レンタル、あるいはリースという形で設備導入するケースが多いが、十和田市はこのLED投光器を3セット"購入"した。それだけ、冬の十和田の素晴らしさを知ってもらおうという期待の現れであり、いかようにも使えるようにしたことで、夏季期間でもなんらかのイベントごとに活用できるだろう。
1月10日にスタートしたこの冬のナイトツアーには600名以上が参加しており、3月中旬までのツアー期間で700名以上を見込む。集客力のある星野リゾート 奥入瀬渓流ホテルに1セット(1台)貸し出して無料のツアーを、市としてはツアーを運行するためのバス運賃代として2000円を徴収している。
1度宿泊すれば、それだけで数万円が各宿泊施設に落ちてくる。飲食代を含めれば、この冬だけでもそれなりのインパクトがあることがわかる。奥入瀬渓流ホテルの宮越氏も、「Instagramで『氷瀑』と検索すると、奥入瀬のようすが多く出てくる。これだけの氷瀑を見られるスポットはなかなかない。スキーやスノーボードといったアクティブなスポーツをせず、寒い思いもすることなく、冬の絶景を、自然が守られた国立公園で楽しめる場所はない。それが実際に評価として上がってきているんだと思う」と話す。
とはいえ、再チャレンジ初年度。正直なところでは「なかなか難しいと思った」と宮越氏は苦笑いする。設備環境など複数の要因もあるが、稼働させている部屋は6割で、それでもなお空室があるという。
「冬の青森旅行はもともと難しいと感じていた。何を魅力に感じてもらうか、売りを見つける作業を2年前に始めてからここまで来た。赤字は赤字で、冬季休業していたときよりも赤字になりかねない。でもそこは星野リゾートとして、培ってきたノウハウがある。ライトアップは特にインバウンドの外国人の方の反応がいい。海外で影響力のあるインフルエンサーの方などに知ってもらい、特に雪に馴染みのないアジア人にスキーだけではない雪の地域の魅力を訴求していきたい」(宮越氏)
星野リゾートが作り上げた「トマム」というブランドは、かつて一度地に墜ちたものを再生したものだ。「売りがない」だけの地の十和田であれば、もっとスポットライトを浴びてもいい。十和田市と星野リゾート、それぞれが奥入瀬渓流に思いを抱いてナイトツアーを作り上げたが、成功への道筋を照らせるかどうかは、両社がこうした企画を継続して打ち出せるかどうかにかかっている。