健康にまつわる社会課題を解決することを明確な目的として活動する団体や個人を表彰する「健康食育AWARD 2018決戦大会」が2月22日、東京都・日本橋公会堂にて開催された。

  • 東京都・日本橋公会堂にて「健康食育AWARD 2018決戦大会」が開催された

地方の独自性を打ち出す必要性

農林水産省、経済産業省、読売新聞東京本社の後援によって開催されているこの「健康食育AWARD」は今回で3回目となり、「食」にまつわるさまざまな食育活動を普及・推進させることなどを目的に行われている。

この日はまず、基調講演として岡山県総社市の片岡聡一市長による講演が行われた。「すべてとは言わないが、10年前と比べて地方の裁量権、独自性が担保されるようになってきている」と話す片岡市長は、これまでに食や健康に関するさまざまな画期的な取り組みを実施してきた。

  • 岡山県総社市の片岡聡一市長

    岡山県総社市の片岡聡一市長

総社市では「健康診断を受け、1年間無病息災であれば1万円を支給する」など、健康に対してインセンティブをつけるという考え方で独自の取り組みを実践。批判も多く集まったが、「みんなが元気でいることが軸足」と、市民が健康意識を高め病気になりにくい健康的な生活を実践できれば、結果的に医療費が削減されると話した。今後は歩数計を使った試みなどを実施していくという。

また、総社市内で収穫された野菜を積極的に給食に使用しており、そのための公社も設立している。「今の子どもも昔の子どもも、学校給食をテーマにして同窓会で盛り上がったりする。(地元食材を)食べるということ、食べたということでみんなが郷愁をもって地元を愛していく。それが真の食育につながっていく」と、信念を持って今後も食育に取り組んでいくと話した。

プレゼン後に大賞が決定

基調講演の後は、全国各地で行われている活動の中から選出されたファイナリスト8組がプレゼンテーションを実施。各々の取り組みを7分程度にまとめ、審査員が内容をジャッジし、各賞を決めていった。

一般社団法人 日本健康食育協会賞(大賞)およびオーディエンス賞: アグリマス 代表取締役 小瀧歩氏

大賞となる一般社団法人 日本健康食育協会賞を受賞したのは、アグリマス代表取締役・小瀧歩氏。「日本一、食にこだわるデイサービス! 」をコンセプトに食材には産直有機野菜を使用し、素材や温かい料理にこだわってきた。だが、日本全国にある多くのデイサービスが赤字であるという現状もあり、何度も「あわや倒産」という事態に直面したとのこと。

  • アグリマス代表取締役・小瀧歩氏

    アグリマス代表取締役・小瀧歩氏

そこで、生ライブ配信でヨガや空手、ドクターセミナーなどを放送する「健幸TV」という保険外事業を実践。厚労省の保険外サービスガイドブックに掲載され、高齢者住宅のコンサルティングなど、高収益ビジネスモデルを確立している。介護業界の食習慣にイノベーションを起こすべく、今後も活動を続けていくという。

健幸TVでは「椅子空手」の講師も務める小瀧氏はこの日、気合いを入れて道着で登壇。その活動内容も含めて観客の心をつかみ、オーディエンス賞も合わせて受賞した。小瀧氏は「奇跡のようなことが起きて、ここまで続けてこれた。この先の人生で、このプロジェクトを本気で取り組んでいきたい」と喜びを語った。

一般財団法人 生涯学習開発財団賞(金賞): 子ども向け食育団体「キッチンの科学プロジェクト(KKP)」代表・講師 金子浩子氏

金賞に該当する一般財団法人 生涯学習開発財団賞は、子ども向け食育団体「キッチンの科学プロジェクト(KKP)」代表・講師の金子浩子氏が受賞した。

  • 子ども向け食育団体 キッチンの科学プロジェクト(KKP)代表・講師 金子浩子氏

    子ども向け食育団体「キッチンの科学プロジェクト(KKP)」代表・講師 金子浩子氏

同氏は、食と科学を融合させた体験型食育活動「食育科学ワークショップ」を実践。科学に対するワクワク感によって、食へ無関心な子どもたちにもアプローチし、自然な食育体験へと導く。次世代の人材育成や子育て支援、環境学習の推進など、さまざまな方向性からの取り組みにより、誰もが楽しめる食育を目指している。

一般社団法人 楽習フォーラム推進協議会賞(銀賞): 医療法人社団 ミオ・ファティリティ・クリニック 栄養管理部 長山詔子氏

銀賞となる一般社団法人 楽習フォーラム推進協議会賞には医療法人社団 ミオ・ファティリティ・クリニック 栄養管理部の長山詔子氏が選ばれた。

  • 医療法人社団 ミオ・ファティリティ・クリニック 栄養管理部 長山詔子氏

    医療法人社団 ミオ・ファティリティ・クリニック 栄養管理部 長山詔子氏

妊娠を望む治療を行う過程において、体内老化を防ぐために食生活改善の必要性を感じていながらも、実践できない女性は少なくないとのこと。その原因の一つに食体験の脆弱さがある。そこで同氏は、クリニックでも提供している食事を「みおごはん」として、さまざまな形で食体験の場を提供できるよう、精力的に活動を行っている。