次に改良されたのが、精度と速度を両立した高速オートフォーカス「ファストハイブリッドAF」です。像面位相差検出方式のAFは693点で、これは高速撮影モデルのα9と同じ。コントラスト検出方式のAFは425点で、こちらは高画素モデルのα7R IIIと同じとなっています。つまり、上位機種のいいとこ取りの形となっているわけです。α9やα7R IIIで搭載して話題を呼んだ瞳AFもしっかり搭載しています。「スタンダードモデルでも、このレベルのオートフォーカス性能はもはや必須」といわんばかりの内容といえるでしょう。
オートフォーカスや自動露出を働かせながら連写できるAF/AE追随の連写速度が10コマ/秒にまで高まったのも注目できます。ソニーの担当者によると、シャッターユニットは静粛性や低振動を重視したα7R IIIとは別のユニットということで、撮影時のノイズやショックは多少大きめとのことです。しかし、無音でも10コマ/秒のAF/AE追随で撮影できるサイレント撮影も搭載し、幼稚園の発表会やライブなどで周囲に迷惑をかけずに撮影したいと考える人には大きな武器となってくれそうです。
ミラーレス一眼の欠点とされていたバッテリーの持ちも改良し、1回の充電で約710枚の撮影ができるようになりました(電子ビューファインダー使用時は約610枚)。ミラーレス一眼としては史上最大枚数とのことです。USB経由(microUSB、もしくはUSB Type-C)での充電にも対応しているので、バッテリーまわりの不満はほぼ解消されたといえます。
動画も、ここ最近のトレンドに合わせて4KのHDR撮影に対応しています。動画撮影時にもファストハイブリッドAFが働くので、誰でもビデオカメラのように手軽にきれいな動画が撮影できます。4K動画から800万画素相当の写真を切り出す機能も備わっています。
唯一残念なのが、ボディー内手ぶれ補正機構を利用して4枚の写真を連続撮影して合成し、解像感の高い写真を生成するピクセルシフトマルチ撮影が省かれたこと。α7R IIIでは目を見張る効果が得られただけに、α7 IIIでもぜひ搭載してほしかったところです。
後追いになる競合他社は大きなプレッシャーに
レンズ交換式カメラはミラーレス志向とフルサイズ志向が年々強まっており、カメラメーカーは各社ともフルサイズのミラーレス一眼の開発を急いでいるとみられます。他社に先駆けて一般向けのフルサイズミラーレス一眼を世に送り出したソニーが、入門機の範ちゅうを大きく超えた高性能カメラをスタンダードとして低価格で発売するとなれば、競合他社にとっては大きなプレッシャーになるのは間違いありません。もちろん、α7 IIIに負けじと優れた性能のカメラが各社から登場すれば、長らく停滞気味だったカメラ市場が再び盛り上がるはずです。
突如現れて挑戦状を突きつけた風雲児がカメラ業界をどう変えていくか、2018年は目が離せない年になりそうです。
α7 IIIのおもな仕様は以下の通り。
- レンズマウント:ソニーEマウント
- 撮像素子:フルサイズ裏面照射型CMOSセンサー(有効2420万画素)
- ボディー内手ぶれ補正:5軸、5段相当
- 画像処理エンジン:BIONZ X
- AF点数:693点(位相差検出方式)、425点(コントラスト検出方式)
- 対応感度:ISO100~51200(拡張時はISO50~ISO204800)
- シャッター速度:最高1/8000秒
- ファインダー:電子ビューファインダー(235.9万ドット)
- 液晶モニター:3型(約92万ドット、チルト式、タッチ操作対応)
- 無線LAN:あり
- バッテリー撮影枚数:約710枚(背面液晶使用時)、約610枚(電子ビューファインダー使用時)
- サイズ:W126.9×H95.6×D62.7mm
- 重さ:約565g (ボディー単体モデル)