もう一つ注目したい製品がブースにありました。コネクテッドカー向けスマートスピーカーのプロトタイプです。
こちらの製品には東芝デジタルソリューションズ独自の音声合成技術であるコミュニケーションAI「RECAIUS(リカイアス)」、米SoundHound社の対話型ボイスインテリジェンス「Houdify」、ならびに日本のベンチャーであるNAIN(ネイン)の日本語音声合成などの技術を組み合わせて、オンキヨーが独自に構築したAIプラットフォーム「Onkyo AI」が搭載されています。今年の1月にアメリカで開催されたCESでオンキヨーが披露して話題を呼んだウェアラブル型スマートスピーカーのプロトタイプ「VC-NX01」と同じAIプラットフォームになります。
開発を指揮しているオンキヨー AI/IoT事業戦略室 室長の宮崎武雄氏にブースでコメントをいただくことができました。なぜいま、このプロトタイプの開発を進めているのでしょうか? 「Onkyo AIのプラットフォームが、どんな生活シーンでユーザーに新しいスマートライフをご提案できるのか、色々なスタイルを検討している。その一つがCESで発表したポータブル&ウェアラブルであり、今回のMWCでは車載という形をお見せしている」のだと宮崎氏が説明しています。
今回のプロトタイプも当然ボイスコントロールに対応しています。届いたメールやメッセージの読み上げ、天気・交通情報などが操作のたびにハンドルを握る手を離さなくても声だけで対応できるところは、ドライバーの安全運転をサポートするうえでも大変有効です。仮のウェイクワードである「ハロー、ブルージーニー」と発声してからスピーカーに呼びかけるとコマンド入力モードに切り替わります。複数種類のボイスアシスタントの声が切り替えられるOnkyo AIプラットフォームの特徴的な提案も車載向けスマートスピーカーに搭載されていました。
さらに今回のプロトタイプでは音楽再生のデモも行われていました。音楽ソースは展示会場の通信環境を考慮して、本体の内蔵メモリーに保存しているものを再生していましたが、本機をダイレクトにネットワークにつないで音楽ストリーミングのコンテンツを再生する使い方にも対応できるとのこと。さらに車でアウトドアレジャーにでかけた時の場合などを想定して、スピーカーを車から取り外して屋外で音楽やスマートサービスを活用したい時のために、本体にはバッテリーだけでなくSIMによるモバイル通信機能を載せる計画もあるのだとか。
オンキヨーもメンバーとして参加する、トヨタ自動車やフォードなどコネクテッドカーのブランドが立ち上げた「スマートデバイスリンク コンソーシアム(SDL)」も今年のMWCに参加していますが、こちらのブースではオンキヨーの車載用スマートスピーカーがデモカーの中にセットされた状態で動いていました。ある程度騒音に囲まれている場所でも、オンキヨーの高精度なマイクロフォンの技術によってボイスコマンドに素速く対応する様子を確認することができましたが、いまは四角いペンケース状のスピーカーが止まっている車のボンネットの上にポンと置かれているだけ。どうやって固定するか、あるいはサイズ感やデザインそのものをどう練り上げていくかが今後の課題であるとオンキヨーの宮崎氏は語っていました。本体をより小さくしたAIのブレーンを製品化して車のミラーに装着、音楽再生には車載のスピーカーを使うという手段もあるかもしれません。またはOnkyo AIを載せたヘッドユニットを商品化することも考えられます。コネクテッドカーとも相性が良さそうなOnkyo AIの今後の展開に要注目です。