最後に酷評されている音声アシスタントに触れておきましょう。Apple Musicを使う分には、Siriは頼もしい存在です。「Wake me up at 5AM (明日の朝5時に起こして)」、「Do I need umbrella today? (今日、傘を持って出る必要がある?)」「What's the tallest mountain in Japan? (日本で最も高い山は何?)」というような簡単なタスクや質問にもしっかりと答えてくれます。でも、複雑になってくると対応できません。HomePodのSiriのアシスタント力がGoogle HomeのGoogle AssistantやAmazon EchoのAlexaに敗北を喫したというのもうなずけます。
ユーザーの個人情報へのアクセスも制限されていて、HomePodからカレンダーにはアクセスできません。メッセージ、リマインダー、メモにはアクセスできますが、「Personal Requests」を有効にする必要があります。オンにすると、そのユーザーのiOSデバイスが同じWi-Fiネットワークにつながっている時にメッセージ/リマインダー/メモをHomePodから利用できるようになりますが、ユーザーだけではなく、他の人も音声でアクセスできてしまいます。完全に個人で使う以外は無効にしておくべきでしょう。役立つとは言いがたいナゾ設定です。
Google HomeやAmazon Echoは話しかけた人の声を認識し、個人のアカウントを自動的に切り替えてくれるので、複数の人でスマートスピーカーを共有できます。HomePodでそれができないのは残念です。Appleがそこに気づいていないとは考えにくく、あえてこのような不便な仕組みにしているのは、個人アカウントの切り替えに使えるほど同社は音声認識の精度やセキュリティを信頼していないのかもしれません。
音声アシスタントスピーカーとして比べると、HomePodはできないことばかりです。でも、Google AssistantやAlexaの方が"できること"は多くても、それら全てが有用なものとしてユーザーに使いこなされているかというと疑問符が付きます。今日の音声アシスタントは、まだ人と自然に会話して、あらゆる要求に柔軟に対応してくれるほど進化してはいません。
一般的にスマートスピーカーの"スマート"は音声アシスタントを指しますが、HomePodは音声アシスタントを使うためのスピーカーではありません。Google HomeやEchoがGoogle AssistantやAlexaを各家庭に浸透させるために作られたスピーカーであるのに対して、HomePodは音楽スピーカーのインターフェイスとして音声(Siri)を採用したスピーカーです。HomePodのSiriでできることは限られますが、見方を変えると、音楽を楽しむためのスマートデバイスを便利に使うために必要なことに絞り込まれています。それによって、音声アシスタントが音楽スピーカーのインターフェイスという役割をしっかりとこなしています。さらに、空間認識と自動キャリブレーション、効果的に空間を満たすサウンド制御、曲ごとの調整、Siriによるパーソナライズ選曲、モバイルデバイスとの連携など、スマートに音楽をとどける能力に長けた"スマート"スピーカーです。Apple Music縛りを嫌う方が少なくないと思いますが、音楽を聴く人ならHomePodが示すストリーミングサービス時代の新たな音楽の楽しみ方を一度は体験してみることをオススメします。