Apple初のスマートスピーカー「HomePod」。大事なことなので、最初に書いておくと「音楽を聴かない人は買ってはいけないデバイス」です。逆に言うと「音楽を聴くためのデバイス」です。すでに米国で多数のレビューが公開されていますが、その大前提に触れていない「ちゃんと使った上で書いてる?」と言いたくなるような的外れなレビューが多く、HomePodを試してみるべき人/買ってはダメな人のニーズが満たされない情報がはびこっているように思います。
Appleがオーディオ性能をアピールしている通り、HomePodはスマートオーディオスピーカーです。価格は349ドル。Googleの「Google Home」やAmazonの「Echo Plus」の倍以上の価格ですが、家庭に音声アシスタントをもぐり込ませるためのお手頃価格デバイスとは目的が異なります。名前に"Pod"を冠するように、HomePodはiPodと同じ音楽を楽しむためのデバイスです。
入手してから一週間以上、毎日使い込んで実感しているのは、オーディオ性能が最大の特長ではないということ。矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、たとえるならHomePodは自動車のオートマ (オートマチックトランスミッション)です。走りを追求する人はマニュアル車を選び、うまい人が運転するマニュアル車に乗ったら、速くそして燃費も良いすばらしい走りを体験できます。でも、その走りはドライバーの運転技術に大きく左右されます。オートマなら、免許取り立ての人でも難なくスムースに走らせられます。運転方法もシンプルで、ギアの仕組みを知らなくても大丈夫。誰でも楽ちんに安定して走らせられるのがオートマの長所であり、運転技術がものをいうマニュアルと走りを比べて優劣をつけることはできません。
HomePodはまさに"オーディオシステムのオートマ"です。最高の音を追求して構築されたオーディオシステムが作り出す音像は素晴らしいものですが、そうした空間を作るには知識や経験、そして投資も必要です。HomePodは、ただ置くだけ。そこが障害物の多い仕事部屋でも、広いリビングルームでも、または細長いキッチンでも、どんなところでも置くだけで音楽を楽しめる環境を自動的に整えてくれます。知識も、経験も必要ありません。