カレールウでカレーを一番おいしく作る方法

松永: 「その後、カレールウ自体も進化しているんでしょうか」


船越さん: 「カレーも進化していますから、ハウス食品も2017年2月から、新しくペーストタイプのカレールウ『きわだちカレー』を展開しています。パウチに入っていますが、レトルトカレーではなくペースト状のルウですので、調理が必要です。また、レトルト製品とは保存するための殺菌方法が異なります」


  • カレーペースト「きわだちカレー」は、カレールウよりも素材が持つみずみずしさを生かして作られている

    カレーペースト「きわだちカレー」は、カレールウよりも素材が持つみずみずしさを生かして作られている

船越さん: 「レトルトの場合、100度を越える温度で長時間レトルト殺菌をしなければならず、その工程で食材が持つ風味が変化します。そうした加熱をしてもおいしくなるようにするのが、各社の技術なんですが。このペーストタイプのカレールウは、独自の製法によって、これまでのカレールウがトマトパウダーだったところをもっと水分の多いトマトペーストに変えられるようになっているなど、素材が持つ本来の風味を生かすことができます。また、スパイスが持つ香りも生きています」


松永: 「こだわりのカレーを手軽に作りたいという人にぴったりな感じがしますね。ちなみに、カレーを一番おいしく作る方法は、やはりパッケージに記されている作り方通りということでしょうか」


船越さん: 「お客さまのお好みがあると思いますが、カレールウが持つ良さを生かす方法は、箱に書かれている作り方です。バーモントカレーの場合、肉・野菜を加えてタマネギがしんなりするまで炒めた後、水を入れてあくをとり、沸騰後約15分煮込んでから火を止めてからルウを溶かし、さらに弱火で約10分煮込むという作り方です。まずはその作り方通りにやってみて、それからお好みでアレンジをされるといいかと思います。ただ、味を足す際にその味が表に出てくるまで足すのは駄目だと思います。隠し味は隠れるぐらいがちょうどいいんです」


  • おいしいカレーの作り方はいたってシンプル。まずは説明通りに作ってみて、それから隠し味程度にアレンジをしてみるといいだろう

    おいしいカレーの作り方はいたってシンプル。まずは説明通りに作ってみて、それから隠し味程度にアレンジをしてみるといいだろう

松永: 「あと、パッケージを見て気がついたんですが、開封したカレールウは冷蔵庫に保存しないといけないんですね。いつも常温保存していました」


船越さん: 「それは、キッチンの環境で影響を受けないようにという衛生面の理由と、低温の方が味覚の変化が少ないという理由からです。開封すると空気にさらされるので、その状態で長期間保存するのであれば低温の方がいいです。箱から出すだけでしたら、全然常温で大丈夫です」


カレールウ日本一の会社は社員食堂も抜かりなし

松永: 「今までいろいろお話をおうかがいしていてずっと思っていたことなんですけど、なんだかとっても楽しそうに話してくださいますよね。やはり、ハウス食品の方はカレーが好きな方が多いんでしょうか」


船越さん: 「(笑)。他の会社の方と比べたことはないんですが、確実にカレーが好きな人は多いと思いますよ。カレーが嫌いでうちに入る人はいないかと。普通にカレーの話が社内で飛び交っています」


松永: 「船越さんご自身はどのくらいの頻度でカレーを食べますか」


船越さん: 「研究所で作った試作品を食べることもあるので、平日のうち3~4日は食べていますし、休日もどちらか1日は食べますね。平均すると、週4~5日というところでしょうか。仕事で外出したら、まだ行ったことがないカレー店に行きますし。それが私の日常的な行動ですね」


松永: 「想像以上でした(笑)。逆に、残りの2~3日は何を食べられているのかが気になります。ちなみにですが、オススメのカレー店ってありますか」


船越さん: 「その質問はよくされますが、私は『どんなタイプのカレーがお好きですか』と聞き返すようにしています。例えば、スープカレーとインドカレーと欧風カレーを比べるのは、私にとってはナンセンスなんですよね。その方はものすごくスパイスが利いたインドカレーを教えてもらいたいのに、そこでコテコテの欧風カレーを勧めてもな、と思いまして」


松永: 「ハウス食品内にもカレークラブ的な活動はあるのでしょうか」


船越さん: 「ありますね(笑)。私ども事業部のメンバーは仕事でやっているので、そうした活動には参加していませんが、いろいろなカレーを食べ歩いているようです」


松永: 「やっぱり、社員食堂にもカレーはあるんでしょうか」


船越さん: 「ありますよ。毎日出ます。通常サイズは300円で、自分でご飯とカレーを盛るスタイルです。+100円でトッピングもでき、1日5~6種類くらい日替わりで並びます。おかわりはできないですけど、トッピングも含めて盛り放題です。カツがあれば『今日はトッピングにしようかな』となりますね。食堂の店長に聞いたところ、普通のカレーもトッピングカレーも出る量は同じくらいで、一番出ているのは100円のミニカレーのようです。定食にプラス1品とか、女性だと大きなサラダにプラス1品とか」


  • 社員食堂のカレーはセルフサービス。カレーもトッピングも日替わりで盛り放題!

    社員食堂のカレーはセルフサービス。カレーもトッピングも日替わりで盛り放題!

船越さん: 「週単位でメニュー表があるんですが、カレーも日替わりで、バーモントカレー時もジャワカレーの時もあります。あいがけは2週間に1回くらいで、金曜日は『ザ・カリー』のイメージだったんですけど、最近は違うようです。スープカレーも月1回くらいの頻度だったと思うんですが、この前は週1回くらいあったような……」


  • この日のカレーは「ジャワカレー<キーマカレー>」と「きわだちカレー」。通常サイズが300円で+100円でトッピングができる

    この日のカレーは「ジャワカレー」と「きわだちカレー」。通常サイズが300円で+100円でトッピングができる

松永: 「あのぅ、やっぱり楽しそうですよね(笑)」


船越さん: 「こうしたことが、会社の中で普通に会話されています(笑)。カレーがどんどん、進化と拡大をしているんですよね。日本では最初、カレーライスが進化してきましたが、バブル期以降、タイとか本当のインドカレーとかがどんどん入ってきて、カレーの概念が広がってきました。カレーというものの可能性が広がっている時代だと実感しています。その中で我々も、お客さまにいろいろなカレーのおいしさを提供していきたいと思っています。今までのカレーももちろん大事にしながら、新しいカレーのおいしさを提供していくために、日夜研究を続けています」


松永: 「ありきたりな質問ですみません。長きに渡りカレーに関わってきた船越さんにとって、カレーとはなんでしょうか」


船越さん: 「その質問、たまにされることがあります(笑)。道ですかね。探求する道。"カレー道"じゃないですけど。いつまでも追い続けたいもの。生きがいに近いのかもしれませんね。よく言われるんですよね、『それは幸せですね』と。確かにそうではありますが、もちろん、苦しい面や大変な面もあるんですけどね(笑)。でも、すごく恵まれているなって思っています」



「カレー粉を食べるとカレーの味がしないのはなぜ」という質問から始まった今回のインタビュー。節々で脱線しながら、「だからカレーが好きなんだ」という話に落ち着きそうになったものの、カレーの奥深さを改めて知った思いである。

結局、「カレーの味」をどう定義するかはその人次第ではあるものの、いろいろな歴史と文化と家庭の事情が合わさって、今日のカレーがあるということだ。「今日はカレーよ」「やったー」という時代を思い返しながら、今日は思い切ってカレーにしよう。

※価格は税込