この件に関しても野村氏は、「個別企業との取引の話であり、回答はご容赦願いたい」と語り、会見後の同社のPC事業の考え方に対する質問にも言及を避けた。一般的ともいえるこの質問についても、この時点ではなんらコメントをしないことを考えると、むしろ、この話が現実的に進んでいることを感じざるを得ない。
実は、鴻海グループが持つ欧州などのサーバー・PCの生産拠点は、HP.incやデルの生産拠点を買収したものであり、現在もHP.incやデルから受託生産を行っている。サーバーの生産量では、全世界の6割を鴻海グループが占めているとも言われるほどだ。
ただ、PCに関してはデスクトップPCの生産が中心で、ノートPCなどの生産では力不足の印象が否めない。ここに、東芝というブランド力と、かつてノートPCでトップシェアを維持し続けた開発力、技術力が加われば、鴻海グループとしての世界的な競争力が高まる。
東芝のPC事業にとっても、失った自社生産体制を改めて構築できるというメリットがあり、お互いの補完関係が見えてくる。今回の会見で、PC事業に関するコメントをかたくなに拒んだことは、かえって気になる。今後注目しておきたい動向だといえる。
次期CEO候補は3名の中から?
そして、最後が、2018年1月からスタートした社長の戴 正呉氏と3人の共同CEO体制である。この体制では事業軸と地域軸で担当を分担し、戴氏が事業軸として8Kエコシステムとアドバンスディスプレイシステム部門を担当。地域軸ではASEANおよび米国の8Kエコシステムを担当することになる。
一方で副社長の石田 佳久氏はAIoTとスマートホーム、スマートビジネスソリューションを担当し、地域軸では欧州・米国のAIoTを担当する。また、野村氏はIoTエレクトロデバイス部門のほか、研究開発事業本部、管理統轄本部を担当。地域軸では日本を担当することになる。代表取締役の高山 俊明氏は事業軸で担当がなく、地域軸で中国を担当することになる。
「これは、将来のCEO選出に向けた人材のプールとして実行している」と野村氏は説明。それぞれの共同CEOが事業軸と地域軸で事業責任を持ち、クロスする部分については共同CEO同士が連携を目指す。次期CEOについては、外部からの登用も視野に入れているというが、この3人のなかから選出されることが現時点では有力だ。
戴社長の手腕により、成長軌道に乗ったシャープの今後の舵取りを担う次期CEOの選出に向けた動きは、今後半年間における重要なポイントになりそうだ。