クルマの所有をリプレイスする
「ハードウェアとしてのクルマではなく、『移動需要』にフォーカスしないと時代の波に取り残される」。許氏はIDOMがNORELの立ち上げを決めた背景として、このような危機感があったと振り返る。NORELが目指すのは、クルマの「所有そのものをリプレイス」(以下、発言は許氏)することだという。
NORELの特徴は「体験できるクルマの数」だ。「新車の利用年数は平均9年で、リースなら短くて3年、長くて9年といった具合だが、NORELであれば10年で30台、一生に100台も不可能ではない。従来のクルマの所有体験とは全く違う」。それでいて、クルマの利用をやめたい時はいつでもやめられる。この「自由で多彩なクルマ体験」こそが、NORELが打ち出す強みだ。
「レンタカーやカーシェアなどと比較されることもあるが、NORELは所有体験のリプレイスを担うので、一時利用のユーザーとは市場が違う」というのが許氏の見立て。また、「レンタカーやカーシェアリングはフレキシビリティーこそ高いものの、利用頻度の高い人には割高になるので、頻度が上がるようであればNORELの方がお得」だそうだ。
ローンを組むか、月額契約を結ぶか
NORELの今後について、許氏は「まずは年商10億円を目指して投資を拡大していく。まだまだ認知度は低いので、広告投資には1桁(金額の)違う投資を仕掛けたい」とする。ちなみに、NORELではすでに一定数の契約数を確保できているので、投資を抑制すれば今すぐにでも黒字化を達成することが可能だそうだが、スタートアップでもあるので、まだまだ継続的に投資を増やしていくべき段階だというのが許氏の現状認識だ。
全国展開で需要が増えれば、人気車種が枯渇する可能性がある。対策としてNORELでは、ガリバーグループで投下できる車両を、2月から月間500~1,000台規模で増やすという。それ以降は、中古車、登録済み未使用車、新車などを持つ他社との提携も視野に、提供可能車両を増やしていく方針だ。
全国展開すれば、日本各地に点在する中古車を、NORELの需要地に運ぶロジスティクスの問題など、対応すべき課題も増えていきそうな感じはする。しかし、クルマが必須という地域は日本中にあるわけだし、ローンを組んでクルマを購入し、月々いくらという金額を払い続ける“所有”から、NORELに“乗り換える”という決断を下す人がいてもおかしくはない。
「残債もなく、ローンも組まず、必要な時に、必要なだけ、好きなクルマで、クルマの体験自体を楽しむ。そんな需要に徹底的にフォーカスしたサービスにより、クルマの所有体験を根底から変えていく」。こういったビジョンのもと、NORELでは今後も事業拡大を図っていくという。