国民的アイドルグループ・AKB48。その最後の第一期生として、今も現役でグループの中で活躍する峯岸みなみが、初舞台に挑戦する。峯岸が今回出演するKAAT 神奈川芸術劇場プロデュースの『三文オペラ』は、ベルトルト・ブレヒトによる世界的な名作で、何度も映像化・舞台化されている作品だ。SOPHIA・MICHAELのヴォーカルで、俳優としても活躍する松岡充が主役を務め、第13回全日本国民的美少女コンテストのグランプリ吉本実憂、宝塚歌劇団元宙組トップスターの貴城けいなど様々なメンバーが集まる。
「舞台を観に行く時間だけが至福だった」と語る峯岸は、観ている作品も幅広く、オーディションで勝ち取った初舞台に向けて努力を重ねている。峯岸に、観劇愛と舞台への意気込みについて話を聞いた。
舞台に惹かれた理由は
――峯岸さんはここ数年で観劇が趣味になったということですが、何かきっかけはあったんですか?
昔からメンバーや友達に舞台をやっている子が多かったので、観に行っていました。感想を話すと「よく観てるね」とすごく喜んでくれるのが嬉しくて。観方がわからないと思って敬遠していたんですけど、だんだん舞台を観るようになりました。
でも一番グッといったきっかけは、2016年の自分が、AKB48としても個人としても、モチベーションを保つのが難しい時期だったことかもしれません。あまり人にも会いたくなくて、少し閉鎖的な時期で……その時に、舞台を観に行く時間だけが至福でした。何か嫌なことがあったり、頑張れなかったりする時はいつも舞台を観ていたし、その時間が本当に楽しいんです。感想をSNSに書くと、ファンの人が「観てみたくなりました」と言ってくれるのも嬉しくて、「舞台を観るのが好きなんだな」と自覚し始めました。
――映画やドラマでもなく、舞台だったのはどういう点がよかったのでしょうか?
舞台は、完全にその世界に連れていってくれるからかもしれません。映像は平面だけど、舞台は立体というか、生身の人間が動いてみせてくれるものなので、ずっと心に残っているのだと思います。好きな舞台は2回観たりするのですが、観る回によって多少違うところも面白いし、席によっても全然観え方が違ったりして、生きている感じが面白いと思います。
――立体と言われると、たしかにそうですね。
訴えかけてくる面の数が全然違う、というか。舞台だったら「今日は視点を変えてあの人を観よう」というところもできるから。
――2017年で印象に残っているのはどんな作品ですか?
なんだろう……「劇団た組。」の『壁蝨(だに)』と、あとはロ字ックの山田佳奈さんと、松本亮さんのユニット「サンボン」の『口々』が心に残っています。
――本当に小劇場も観ているんですね!
大きい舞台も好きですが、今パッと心に浮かんだので、やっぱり自分の中に残っていたんだと思います。根本宗子さんの『スーパーストライク』は、田村健太郎さんという俳優さんを見たくて観に行きました。以前、根本さんの他の舞台で本番直前に急遽代役を務められていて、「この人、すごい」と思ったんです。観に行ったら、さすがでしたし、かっこよかったし、面白かったです。
――そこから、今回は初舞台に。オーディションに挑戦されたということですが、やはり「自分でもやってみたい」という気持ちがあったんですか?
観ていたら、やってみたくなっちゃいました。でも、全然違いますね、「みんなすごい!」と思いました。
――いやでも、オーディションに飛び込むってなかなかできないです。
受かるつもりじゃなかったですから。「たぶん無理だろうな、でも当たって砕けろ」みたいな気持ちでした。でも、オーディションで演出の谷(賢一)さんと台本を読みあったときに、なんとなく、引っかかりがあってくれたような感触を持ったので、受かってから「あの時感じたあれは、本当だったのかもしれない」と思いました。