新型車両がめざすのは「待ってでも乗りたい」電車
新型車両20000系はMT比(電動車・付随車の比)1:1を基本としており、10両編成時は5M5T、8両編成時は2両外すことを前提としている。設計最高速度は120km/h。加速度は3.0km/h/s・3.3km/h/s(切替式)、減速度は常用最大3.5km/h/s、非常時4.5km/h/sとのこと。
台車は軸箱支持方式をモノリンク式としたボルスタレス空気バネ台車。急曲線における安全性向上策も施し、曲線通過性能を向上させた。基礎ブレーキ装置はM車系を踏面式ユニットブレーキ方式、T車系を踏面ブレーキ・ディスクブレーキ併用式とし、安定した制動力の確保をめざした。リング式防音車輪で騒音低減にも配慮している。
パンタグラフと制御装置は電動車の2・4・5・7・9号車に設置。制御装置はスイッチ素子に低損失IGBT、還流ダイオードにSiC(炭化ケイ素)を応用したSiCハイブリッドモジュールによるVVVFインバータ方式とし、消費電力量の削減をめざした。主電動機は容量190kWの全閉内扇形で、内気と外気の熱交換に配慮した形状とし、密閉化による回転音の低減、メンテナンスフリー、さらに高効率特性による省エネルギー化も図った。駆動装置は従来車と共通化し、TD継手方式の平行カルダン方式(歯車比6.06)とした。
補助電源装置は付随車の3・8号車に設置。高効率タイプの3レベルIGBT方式で260kVAの容量を有する静止形インバータ(SIV)とし、編成中2台の片方に異常があった場合でも、延長給電機能により健全側の装置で負荷を負担する。その他、車両情報装置に「Synaptra」(イーサネット版)を採用し、安全性・メンテナンス性を向上させている。
新型車両20000系は相互直通運転を行う上での制約もある中、優美なデザインと高品位な内装を実現し、省エネ機器も全面採用した車両となった。「これから都心へ乗り入れる我々も含め、首都圏の鉄道路線の相互直通ネットワーク化が進む中、各社のエース車両が乗り入れ合う状況で、電車が直接比較される時代に入ったと感じています。新型車両で我々がめざしたのは『待ってでも乗りたい』という電車。さらには都心で『あのネイビー色の電車はどこの電車?』『相鉄線の電車だ!』と認識していただける車両となるように製造を進めてきました。我々にとって前例のない都心直通ということで、他事業者の胸を借りつつ、新しい価値観を都心にもたらしたい」と関根氏は述べた。
今後の車両新造についても触れ、「今回は20000系を1編成製造しましたが、次期の新造車両として相鉄・JR直通線の車両をいったん挟み、20000系の第2編成以降はJR直通線の開業後に作っていこうと考えています。その間、必要に応じて試験・訓練も実施し、確実に開業を迎えられるようにしたいと思います」とのことだった。