当面の課題は、クラウドファンディングのプラットフォームとして他社とどう戦っていくのか、そして海外展開だろう。

国内ではMakuakeやCAMPFIRE、そしてKickstarterなどが注目を集めており、特にMakuakeは和歌山の企業が製作した折りたたみバイクが日本のクラウドファンディング史上最高額を叩き出すなど、活気づいている。

  • Makuakeで公開されたglafitバイクは大きな話題を集め、達成率は4266%、1億2800万円もの調達を実現した

当然、ソニーの看板のもとに、加えてバックエンドの仕組みを活用できる期待を持って、多くの企業がFirst Flightに応募する可能性が高い。ただ、その判断・評価基準を高く据え置いてしまってはクラウドファンディングの「広く募り、芽を育てる」という元々の理念が失われてしまうし、かと言って闇雲にプロダクトを取り扱うわけにも行かない。

さらに言えば、自社製品の取り扱いと外部企業の製品のセグメントの競合や、掲出枠の競合などの問題も出てくるだろう。そうした本来求められるクラウドファンディングの役割と自社製品・SAPの本来の目的を、どうバランスするかが小田島氏らにとって難しい舵取りとなる。

また、海外展開の面では、SAPヨーロッパがようやく走り出したところで、海外向け販売サイト「Hatsuhiko」もまだMESHの1製品しか取り扱っていない。新規事業だからこそ、広くあまねく多くのユーザーの目に触れてもらいたい。それが国内消費者にしか周知できない現状はソニーの名前の下では少しもどかしくも感じる。

ただ、今回のFirst Flightの開放は、世間への間口を広げる一つの契機になる。ソニーはスタートアップに限定せず「新規事業の加速支援サービスの利用を企業やスタートアップにも開放」と説明している。ソニー自身がMakuakeでFES WatchやQrioをリリースしたように、大企業であっても市場性が不透明な製品をテストマーケティングしたいといったニーズにも応えるという意味合いにも読める。

ソニー×◯◯の可能性がどこまで開けるのか。他社とのコラボレーションという"ファーストフライト"がうまく行くかは、操縦桿を握るソニー自身の腕にかかっている。