2018年のAppleの取り組みについて、考えるシリーズ、最終回はソフトウェアとサービスの後編だ。Appleが現在取り組んでいる新しい領域で期待できそうなことについて、考えていこう。
Appleは定額制音楽サービス「Apple Music」を堅調に成長させている。最新の数字では、2017年第4四半期に、登録者数3,000万人に達した。年間1,000〜1,500万人のペースを保って、その会員を増やしている。ライバルとなるSpotifyの有料会員数は2018年1月の段階で7,000万人を超え、こちらも高い成長率を維持している。
AppleはiPod向けに音楽をデジタルダウンロードで購入できるiTunes Storeを開設し、CDの時代へ終止符を打った。しかしYouTubeの台頭から音楽を無料で楽しむユーザーに押され、デジタルダウンロード市場そのものが収束に向かうようになった。その状況に対する施策として、2014年にBeats Electronicsを買収し、2015年にApple Musicをスタートさせ、ビジネスモデルの大きな転換を図った。Apple Musicでは会員から月額料金を徴収し、聴取に応じてロイヤリティを分配する方式を採っている。
アーティストのプロモーションツールとして機能する「Connect」、24時間ライブ配信を楽しめるネットラジオ「Beats 1」、特に米国において音楽試聴のトレンドを醸成する起爆剤となったテレビ番組「Carpool Karaoke」の放映権取得など、コンテンツを充実させることで、音楽聴取の時間をより長くさせるべく、Apple Musicではさまざまな取り組みを行ってきた。日本向けにも、「Tokyo, Music& Us 2017-2018」というオリジナル音楽番組を制作し、第1回の配信が始まっている。小沢健二さんをホストに、トークや演奏を披露する30分の番組で、第1回のゲストは満島ひかりさんだった。こうした番組の制作にはAppleも投資しており、各国で音楽番組やドキュメンタリーなどがさかんに作られるようになった。これは、NetflixやAmazon Prime Video、Huluといったビデオストリーミングサービスが、巨大な視聴者数を背景にして投資し、独自コンテンツを制作する構図に似ている。
そうした独自制作の映像番組は契約者数を伸ばす役割を担うが、Apple Musicの場合は、音楽聴取の促進に役立てたり、音楽のカルチャーやビジネスが生まれる現場としての位置づけを強化しようとしているようにも見える。
Appleは今後も、各国での番組制作や人気音楽番組の買収、オンラインラジオの強化などを行っていくことになる。理想は、Apple Musicで活動を開始しトレンドを生み出すアーティストを次々に誕生させていく「場」になることだ。