試されるタイヤメーカーの対応力
では、なぜチャンスなのか。金原社長は「自動車業界の動きは電動化や自動運転だと思うが、そこで求められるタイヤの性能は従来のものと変わってくる。それには対応できるメーカーとできないメーカーがあり、グッドイヤーは対応する力を持っている。OEM(自動車メーカー)とはクルマの開発段階でも話をするが、メーカーからは『車両が変わるのでタイヤにこういうものを求めたいが、お宅にそんな技術があるか』といったような問いかけを受けることが現にある。それに対応できれば優位に展開できるし、グッドイヤーとしては十分やっていける手応えを感じている」と自信を示した。
自動車業界の変革期で、タイヤに求められるものはどのように変化するのか。金原社長は一例として、「電動化すればトルクが高まるので、それに耐えられるようなタイヤの性能が求められる。それはどこでも(どのタイヤメーカーでも)できることではない」と語った。
カーシェアの普及でタイヤのビジネスモデルに変化
求められるタイヤの在り方も変われば、タイヤメーカーのビジネスモデルも変化する。試乗会で話を聞いた日本グッドイヤーのマーケティング担当はCASEの「S」、つまりカーシェアリングの進展がタイヤの売り方に影響を及ぼす可能性に触れた。
カーシェアリングが進めば、クルマは個人が所有するものから業者がまとめて所有・運用するものへと変化するかもしれない。そうなれば当然、タイヤの売り方も変えていく必要が出てくる。一般向けにコマーシャルを展開する従来の手法を、BtoB寄りにシフトさせねばならなくなるわけだ。
また、シェアリングでクルマの稼働率が上がる点も見逃せないポイントだ。個人が所有するクルマは、1日のほとんどを家や職場の駐車場などで止まって過ごすが、シェアリングが一般化すればクルマ1台あたりの稼働率は大幅に向上するだろう。そこに自動運転技術が組み合わされば、クルマは1日のほとんどを走って過ごすようになるかもしれない。その分、タイヤの履き替えサイクルが短くなれば、タイヤメーカーにとってはチャンスとなる。
ただし、シェアリングが一般化すれば、クルマを「所有」しようと考えるユーザーが少なくなり、クルマの総台数は減ることになりそう。クルマの台数減少とタイヤ履き替えサイクルの短期化が、差し引きするとタイヤメーカーにプラスに働くのか、マイナスに働くのかには注目したいところだ。