――作品を拝見していて、配信ドラマのように次回が気になる構成になっていました。そういったところは意識されていましたか。
特に配信は次を見るという意識がないとすぐに見てもらえなくなってしまうので、次を見たくなるような感じにというのはありましたね。脚本の大河内一楼さんはしっかり構成を考えながらも、ドラマチックに次へ引っ張るのがうまいというので、そういうところも頑張ってもらっています。
――作品では愛がテーマになっていますが、ほかにコンセプトとして考えていたもの、先ほどの原作を現代に舞台を移し替えて描くというのも一つのコンセプトであるとは思うのですが、そういった本作を描く上での指針はありましたでしょうか。
そうですね。一つは「アニメ化ってこういうふうにするんでしょ?」という感じがあるんですけどね(笑)。媒体の違いに興味があって、ほか媒体の原作ものをアニメに移し替える時にどうやるのか。それに対してああやればいいのかこうやればいいのかなというところを楽しみながら作っています。『DEVILMAN crybaby』に関しては、原作のワイルドさや怖さはアニメではちょっと表現しきりづらいと思ったので感情方面によっていますね。サタンがなぜ泣いたのかとか、明たちは何を守ろうとしたのかとか、なぜ美樹ちゃんがヒロインだったのかとか、なぜ明はサタンに好かれたのかとか。そういうところをより強調する形で。アニメではそのほうがいいだろうと判断して作っています。
――声優キャストはどうやって決められたのでしょうか。
音響監督の木村絵理子さんとやりとりしながらベストなキャストを選びました。一番の冒険は、不動明役の内山昂輝くんが「デビルマン!」というところ。これは最初考えていなかった設定だったのですが、やはり正解だった。最初のかわいい内山くんもすごくいいですよね。
――音楽面もかなり特徴的ですよね。これはどういった流れで制作されたのでしょう。
ぼくからはテーマ曲や大事な曲を何点か指定するだけで、後は選曲の合田麻衣子さんが敷いたラインにのりながらも、音楽の牛尾憲輔さんはすごく作りたがりの人なので、さらに新しいものが出来たりして、曲ができるたびにその使い方を設定していきました。
――それは先に音楽があって、そこから映像を作るという流れですか。
そういうわけでもなくて、音楽が出来た後に合わせて絵を作るのはスケジュール的に難しいんです。シーンによっては既に上がった音楽に映像を当て込んでいく場合はありますけど、完璧には合わせられなかったりしますから。でも使い方がわかるとみんなおもしろがって使ったりしますね。今回も、静かな曲から一瞬盛り上がって、一時、間があって、はじけるという曲があるんですけど、上がって来た時にもうこれは本編の最後から入ってエンディングで流れることにしましょうとか決めて。そういった意味では、尺をそんなにはっきり意識しなくてよかったのが配信の一番おもしろいところではありました。エンディングに毎回違う曲を入れることもできるわけです。気に入るとみんなこの曲をあそこにも使おう、ここにも使おうみたいな感じで使いすぎになっちゃうんですが(笑)。
監督にとって原作『デビルマン』とは
――若い世代は『デビルマン』を知らない方も多いと思います。当時影響を受け、今回アニメ化を手がける湯浅監督から見て、原作の魅力はあらためてどんなところなのでしょうか。
今はわかりづらいとは思うんですけど、エポックメイキング的な作品なんですよね。みんな『デビルマン』以降と以前で変わってしまっているので。今なお追随を許さない点では、当時の世相を読み取っていて、それが現代にも通じるところがあり、そしてその時の人間が頼りないものですよというのが明確に描かれていること。そこまではっきり描かれた作品はあまりなかったのではないでしょうか。作品の真価を知るのは難しいかもしれませんが、漫画でもアニメでも見てもらえれば、少しでも触れていただけるのかなと思っています。
――なぜ"今なお追随を許さない"ことを当時なしえたのでしょうか。
永井さんの破天荒さというのがたぶん今はなかなかありえないですから(笑)。想像力と、おもねらない姿勢。「ほかと違うことをやってやるぞ!」という気概にあふれていますよね。今は、なかなかそういうことは許されないと思ってみんながやっているところがありますから。それは勇気なのかもしれないですけど、そういうスピリットは僕も見習いたいなと思います。
――一発目の登場シーンからぶっ飛んでたりしますもんね。
そうですね。根本的な問題なんですよね。根本的にこれをやるっていうこと自体が。それを発想して形にできているというのがやはり本当にすごいと思いますね。
『DEVILMAN crybaby』は、Netflixにて全10話全世界配信中
プロフィール
湯浅政明(ゆあさ まさあき)
1965年3月16日生まれ。福岡県出身。九州産業大学芸術学部美術学科を卒業後、アニメ制作会社・亜細亜堂へ参加。TVアニメ『ちびまる子ちゃん』第1期(1990年)では本編の原画に加え、初代オープニング(「ゆめいっぱい」)や初代エンディング(「おどるポンポコリン」)の作画を担当した。フリーに転身後、『マインド・ゲーム』(2004年)でアニメ映画監督デビュー。小説家・森見登美彦氏の原作をもとにした『四畳半神話大系』(2010年)ではTVアニメ作品で史上初となる文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞した。2014年には漫画家・松本大洋氏のコミックをアニメ化した『ピンポン THE ANIMATION』でメガホンを取りながら、全話の脚本および絵コンテを手がけた
(C)Go Nagai-Devilman Crybaby Project