Netflixにて配信されているアニメ『DEVILMAN crybaby』が好評だ。本作は、言わずと知れた永井豪氏の漫画作品『デビルマン』を、氏の漫画家デビュー50周年を記念して新作アニメ化したもの。原作があるものにはすでにファンが存在し、アニメ化ともなれば厳しい目で見られがちだ。だが本作は、「次を見るのが止められない」「何度も繰り返して見てしまう」などの声も上がるなど、新・旧ファン問わず熱狂的な支持を集め始めている。この成功の要因は何なのか、監督を務めた湯浅政明氏を直撃した。

  • 湯浅政明監督

アニメ化の際に大事なのは読んだ時の"感触"

――『DEVILMAN crybaby』は、誰もが知る漫画『デビルマン』が原作ということで大きな注目を集めました。湯浅監督は原作がある作品のアニメ化も多く手がけられていますが、普段作られる際にはどんなアプローチで作られるのでしょうか。

知らない原作であれば読んでみて、それがどういう作品なのか、どうやればアニメになるのかを考えます。『デビルマン』については知っていましたし、たぶん簡単にはできないイメージもありました。でも最近調子がいいので自分ならできるだろうと(笑)。考えていけば解決策が出てくるかなと構えていました。

原作があるものにはファンがいます。一般の方はたぶんメディアの違いはあまり把握されていなくて、漫画の絵や台詞をそのままもってくるのがアニメ化だという印象をもたれているのではないかと思います。それが違うと、"改変"とも言われたりしますよね。僕が一番大事にしているのは、読んだ時の感触。読んで自分の中にできたものがその作品だと思っています。一方で、それは人によって見え方が違っているので、人の意見を聞きながらも、最終的に自分にはだいたいこういうのが見えた、こういう事なんじゃないかと想定しながら作っています。

『デビルマン』は70年代の漫画なので、当時の世相や雰囲気を受けた作品です。その当時には"今"として読んでいたものを、今、70年代の話としてそのままアニメにしてしまうと、"過去"の話になってしまう。原作は"過去"の話を描いた作品ではないですから、読んだ時の感触を"今"にもってくるために現代を舞台にしています。これから起こるかもしれない、起こっているかもしれないお話としてこの作品を作ろう。そうしながらも、やはり外せないクライマックスやラストシーン、自分の好きな台詞やポーズもあるので、それを入れるためにどうやってつなげていけばできるのか、ということを考えながら作っています。

原作は絶妙な構成なのですが、でもそれは漫画だからの構成なんですね。例えば、舞台劇をドラマ化するといっても、そのまま舞台全体の画を撮っていてもダメじゃないですか。"そのまま"やるということはたぶんそういうことじゃない。寄ったり引いたりというのは見た人の感覚が入っていますから。やはり自分の見た感覚で現代に合わせていかなきゃいけないんですよね。読み物の場合は、見ている人がその中に書かれていないものまで補完していることが多いんです。映像はもっと受け身なので、その書かれていないものまで補完して映像にしていくイメージですね。

――今回映像化のベースになったのは当時監督が読んだ時の感覚でしょうか、それとも今でしょうか。

それは当時ですね。当時読んで、単純におもしろいというのと、勧善懲悪じゃない、善がやぶれることもあるということが印象深かった。そういう作品も少なかったですし。それでそうなりそうな世相もあって……という。そういうところに感銘を受けていました。とはいえ、16、7歳のころに読んだのですが、やはり読んで一番ショッキングだったのが美樹ちゃんでした。"こういうこと"があるんだ……と。

今回の制作では、"こういうこと"が起こる状況を作っていく、というのも考えていくことの一つでしたね。それと、ラストについて当時はちゃんと意味がわかっていなかったのですが、そういう深い部分については今になって読み直して、こういうことなのか、ああいうことなのかというのを、こう表現すれば当時の自分に説明できるのかなということを考えながら作りました。例えばサタンというと、永井さんはみんながサタンの生い立ちを知っていると想定して描かれていると思うんですけど、僕みたいな知らない人間はそこも描いてあげたほうがより内容が伝わるのかなと思って、足したりして作っていますね。

――アニメ化が決まり、永井先生とはどんなお話をされたのでしょうか。

みんなが集まった席でお話しできる機会があったのですが、いまだに変わらぬ創作意欲と努力を続けられていて、どういったところでモチベーションを保っていらっしゃるのかとかそういったところが気になっていたので、いろいろ質問させていただきました。ですが、自分とはくらべものにならないくらい元気で、力強い感じだったので、逆にこっちがもっと頑張らないと、と思いましたね(笑)。