E351系の下り「スーパーあずさ19号」に乗車した2日後、筆者は松本発新宿行の上り「スーパーあずさ18号」に甲府駅から乗車した。使用車両はデビュー間もない新型車両E353系。ここでも多くの鉄道ファンらがカメラを向けていた。
E353系の大型テーブル、駅弁を食べるのも便利
「スーパーあずさ18号」は14時9分に甲府駅を発車。座席は1号車(クモハE353-2)の5A席である。新型車両E353系の最高速度は、従来のE351系と同じ130km/h。いきなりスピードを上げるものの、力強いというよりは軽快であり、それでも出すべきスピードは出しているといった印象の走りだ。
車内を見ると、E351系より荷棚が大きく、大きな荷物を入れやすい。スーツケースなどを置く荷物置場もある。テーブルは前方の座席に取り付けられた大型テーブルを使用できる。E353系に関する報道の多くが、このテーブルについて「パソコンを開いて仕事しやすい」と評していたものの、それだけではない。大きめの駅弁を食べるのも便利だ。
E353系は甲府盆地をゆったりとした雰囲気で走っていたが、塩山駅から高尾駅までは車両の力量が試される山岳区間となる。カーブ通過時、E353系で採用された空気ばね式の車体傾斜機構が角度を1.5度傾ける。E351系に比べればマイルドな印象だが、それでもスピードを落とすことなく走行できる。
笹子トンネル通過時も、おそらく最高速度を出していたと思われるが、そこまでスピードを出しているとは感じさせない。その後のカーブが連続する区間でも減速することなく、それでいて車体傾斜が乗客に負担を感じさせているとは思えなかった。
車内放送によると、この日の「スーパーあずさ18号」は満席で、自由席には多くの立ち客がいた。そうした理由もあり、車内販売も筆者が乗車していた1号車まで来ることはできなかったようだ。
大月駅を過ぎてもスムーズな走りが続く。テイストとしては「あずさ」「かいじ」に使用されるE257系に近いように思えた。小仏トンネルを通過し、高尾駅から平坦な区間となり、八王子駅に到着。このあたりから本格的にミュージックホーンを使用し始める。立川駅から新宿駅までの走りは、いままでよりさらにスムーズになったような印象があった。
「スーパーあずさ18号」は15時33分、終点の新宿駅に到着。ホームでは多くの乗客らが、新型車両を前に記念撮影を行っていた。
E353系、中央東線の新たなフラッグシップに
特急「スーパーあずさ」に導入された新型車両E353系に対し、沿線の人々も熱いまなざしを向けている様子だった。中央本線の各駅でE353系のデビューを告げるポスターが掲出され、ホームでは新型車両をひと目見ようと多くの人が集まる。
山梨県・長野県の中央本線(中央東線)沿線の人々は、この路線を走る「あずさ」「スーパーあずさ」などの特急列車に少なからず思い入れを持っているのではないかと思う。上京や帰省などで特急列車に乗り、都会と地元を行き来する。そのための列車としての愛着は非常に高かった。普段は「かいじ」に乗ることが多かった筆者だが、「スーパーあずさ」は中央東線のスターとして敬意を抱いていた。
3月17日のダイヤ改正で、特急「スーパーあずさ」は全列車E353系による運転となる予定だ。これまでのイメージを一新し、中央東線の新たなフラッグシップトレインとして、本格的な活躍を見せる日が待ち遠しい。