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坂元作品と言えば、近年では17年1月クールの『カルテット』(TBS)や、16年1月クールの『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ)などがそうであるように、思わず使いたくなるキャッチーな言葉や心に響くセリフも魅力の1つである。しかし、今作では意外にも、セリフ回し以上にストーリー性を重視する傾向があるという。それにはこんな理由がある。

「もちろん定評のセリフにもこだわりますが、それ以上に坂元さんには物語性を大切に取り組んでもらっています。傲慢なことを言うと、昨今のドラマの中でちゃんとした作品性を問うドラマを届けたいからです。視聴率を獲るためだけの仕事はしたくない。『Mother』『Woman』は、ドラマとはなんぞや、今必要なドラマとは何なのか世の中に問い、評価されたつもりでいます。こうした作品の必要性について信念を持っています。生きる上で一番大切なものは何か。ドラマを通じて見ていただいた方がそれぞれの立場で探してほしいと思っています」(次屋氏)

ながら見できる類のドラマではないことは確か。見ながらため息混じりになってしまうほど、人の本質を突きつけられる場面が多い。第1話では「大量の一万円札」を巡って、拝金主義の現実を見せつけられる。けれども、見終わった後に何も残らないドラマにはない、"坂元裕二ワールド全開"とも言うべき癖になる味わいがある。また、これまでのシリーズにはなかったファンタジー感ある映像表現などの新しさもある。

すでにトルコが興味、世界でリメイクの可能性

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「東京ドラマアウォード2017」授賞式でトルコ版『Mother』の海外ドラマ特別賞を祝う次屋尚プロデューサー(左)

普遍的なメッセージ性のある同シリーズは、実は世界でも評価を受けている。『Mother』リメイク版が昨年トルコで大ヒットしたことを皮切りに、世界12カ国で放送がすでに決定し、トータルで80カ国にも展開される見込みだ。その人気を受けて『Woman』のリメイク版もトルコで昨年10月から開始され、好調なスタートを切っている。坂元作品熱が高まるトルコをはじめ、世界のニーズにも応える作品づくりが行われているのだろうか。

「世界展開は意識していませんが、うれしいことにトルコで『Mother』『Woman』のリメイク版を担当したドラマプロデューサーが、すでに『anone』にも唾を付けてくれています。ちなみに、主人公の名前『ハリカ』はトルコ語で『素晴らしい』という意味を持つと知り、坂元さんに確かめたら、ご存知ないというので余計に驚きました。こんな偶然もあり、縁があるのかもしれませんので、今作もリメイクされると思います」と自信を見せた。

なお、タイトルの"anone"は田中裕子の役名であり、主人公・ハリカの接頭語を象徴する言葉でもあるが、『Mother』『Woman』から抜き取ったアルファベットで『anone』が構成できることも「偶然」だという。これらの偶然もまた然り、どうやら"伝説のドラマ"と言われるような条件がそろう『anone』がホンモノであるかどうか、最後まで見届けたくなる。

(C)NTV

■長谷川朋子(はせがわ・ともこ)
テレビ業界ジャーナリスト。2003年からテレビ、ラジオの放送業界誌記者。仏カンヌのテレビ見本市・MIP現地取材歴約10年。番組コンテンツの海外流通ビジネス事情を得意分野に多数媒体で執筆中。