元気寿司との経営統合で
スシローと元気寿司の経営統合は、さらに注目すべき事柄だ。様々な面で回転寿司業界の動きを左右するパワーを持つことになるからだ。スシローの親会社のスシローグローバルホールディングス(SGH)と米卸大手の神明、その子会社となる元気寿司の3社が資本業務提携を昨年9月に発表、SGHと元気寿司の経営統合に向けて動き出している。
SGHにはスシローブランドの店舗があり、元気寿司には主に元気寿司、魚べいブランドの店舗があるが、経営統合により、店舗ブランドの動向が注目される。既存ブランドは統合なのか、存続なのか、そのあたりは経営統合委員会で話し合われることになるが、今のところは既存ブランドの存続が基本路線のようだ。
ただし、既存ブランドが存続する場合、どういった統合効果を見込むのか、出店ハンドリングをどうするのかという疑問が生じる。
統合効果については、原材料の一括調達によるメリットがあると考えがちだが、話はそう単純ではない。特に米の部分だ。SGHは全国農業協同組合連合会から出資を受けており、スシローは全農パールライスから米を手当てしている。対して元気寿司の親会社は米卸大手の神明であり、元気寿司の米調達は神明のルートとなる。経営統合でどこから米を仕入れるかという問題が残る。そもそも経営統合の話自体、米消費の拡大という目的で神明が動いた案件であり、配慮が必要になることもあろう。
仕入れに関して、水留社長の考えのベースは、条件面で有利なほうを選択するというのものだ。米ばかりではなく、寿司ネタも同じ。情報をつき合わせたうえで、有利な条件を提示してくれるところをから仕入れる。とはいいつつも、それをソリッドに実行するのは、難しい側面もあるのだ。
出店計画はどうか。現状、スシローは人口10万人商圏あたり1店舗を出すという考えを持つ。そこには競合店が2、3店舗含まれることを前提にしており、経営統合後、スシロー、元気寿司、魚べいと複数の店舗ブランドが存在しても、影響は少ないようだ。
水留社長は「元気寿司の採算が合えば(スシロー商圏に)出店してもいい。ただし、将来的に統合によって出店ペースが上がり、どちらのブランドで出店するかを迷うなら、売上の高いほうになると思う」とも話す。
一店舗あたりの年間売上では、スシローが3億円超なのに対し、元気寿司、魚べいはおよそ2億円と見られる。経済合理性の観点からは、出店戦略の舵取りは難しい。ブランドを存続させる場合、どこがどういった役割を担うべきか、検討の余地は大きい。
水留社長は「スシローが積み上げてきたものを元気寿司サイドにどう移して、元気寿司、魚べいに展開する。シナジー効果は生み出せると思っている」とし、売上規模から見た経済合理性の不均衡感の解消に向けていく考えを示している。しかし、具体策はまだわからぬまま。どういったアイデアを打ち出すのか、注目されるところだ。