外食産業のなかで好調なのが回転寿司だ。市場は拡大を続けており、2018年もこれまで同様の勢いが続きそうに見える。とりわけ、業界トップのあきんどスシロー(以下、スシロー)は、多角的に戦略を進めており、同社の動きに注目が集まりそうだ。
2017年、低価格回転寿司チェーンのなかで、数多くの大きな動きを見せたのがスシローだ。紆余曲折を経て、同年3月に東証1部に復帰し、同年9月には元気寿司との経営統合に向けた発表が行なわれ、同年11月にはCSN地方創生ネットワークと資本・業務提携を打ち出した。
さらに、大型ショッピングセンターのフードコートへの出店計画に関する報道があったり、韓国に次ぐ海外展開として台湾への複数店舗の出店計画も公表した。業界動向を見る場合、味への取組み、出店計画などが重要だが、スシローの取組みはいずれも興味深い。
天然魚の取扱い拡大で差別化へ
まず、味について。CSN地方創生ネットワークとの資本・業務提携により、天然魚の取り扱いの幅が増えた(一部はこれまでも天然ものを提供)。CSN地方創生ネットワークは全国各地の漁師とネットワークを持ち、新鮮な魚を早急に飲食店に届ける「羽田市場」というサービスを運営、スシローはそのネットワークを生かすことにしたのだ。
天然魚は養殖とは違い、いつ、どれだけとれるかわからない。だからこそ、大量店舗を抱える回転寿司チェーンには取扱いが難しかった。そこに切り込んだのがスシローだった。
天然魚の取扱いを拡大することで、水留浩一社長は「旬の魚を旬なタイミングで提供できることがメリット」と話す。天然魚は養殖魚よりもプレミアム感を抱かせ、味への期待も高めてくれる。もちろん、提供できる量には限りがあるため、提供ネタが店舗によりバラつきが出るものの、天然魚はお客を引き寄せる大きな効果がありそうだ。
そして、天然魚への取組みは早速結果を出している。取扱いを拡大した11月の月次情報では全店・既存店売上、既存店客数・単価ともに前年同月を大きく上回った。この結果について、同社広報部では天然魚への取組みが大きな効果を発揮したと認識しており、この先にも大きな期待がかかりそうだ。
ちなみに、こうした天然魚への取組みは無添くら寿司がすでに実施している。しかし、ネットワークの広さでは、スシローと羽田市場が勝るというのが水留社長の見立て。他社が今後どう出てくるかにも注目したい。