iPhone 8シリーズに続いて発売されたiPhone Xは有機ELディスプレイを搭載し、ホームボタンと指紋認証のTouch IDを廃止、TrueDepthカメラを搭載し、スマートフォンの未来を提示した。サイズはiPhone 8とiPhone 8 Plusの中間で、アルミニウムの代わりにステンレススチールのフレームを採用するガラスバックデザインだ。
iPhone Xはディスプレイ周りこそ異なるが、A11 Bionicや1,200万画素カメラなどはiPhone 8シリーズと共通であり、iPhone 8の派生モデル、と位置づけるのが妥当だ。販売価格は64GBモデルが999ドル、256GBモデルが1149ドル。iPhone 8より300ドル、iPhone 8 Plusより200ドル高い価格設定となっている。
しかし、iPhone Xの製造にかかるコストも、同じだけ上昇すると見る向きがある。Wall Street Journalによると、組み立てにかかるコストは581ドルと予測しており、ETrade Supplyは421.75ドルという予測をしている。予測に幅はあるが、iPhone 8 Plusと比較すると126~286ドルのコスト上昇となる。その販売価格がiPhone 8 Plusより200ドル高いことを考えると、場合によってはiPhone XはiPhone 8 Plusに比べて、1台あたりの利益が下回る可能性がある、ということだ。
より価格の高いデバイスを販売しても、利益が下回るとすれば、利益拡大以外の目的を意識せざるを得なくなる。それはホームボタンを脱却するユーザーインターフェイスの刷新と、機械学習に強いA11 Bionicプロセッサを最大限に生かす生体認証のアピール、そしてiPhone10周年という記念の3点となるはずだ。
もちろん、製造コストは下がっていくことが期待できる。有機ELディスプレイはSamsung以外のサプライヤーとしてLGなどへの投資を進めている。またTureDepthカメラについてもiPad Proへの採用が予測されるなど、コストダウンを実現する環境作りが続けられていくだろう。
松村太郎(まつむらたろう)
1980年生まれ・米国カリフォルニア州バークレー在住のジャーナリスト・著者。慶應義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。近著に「LinkedInスタートブック」(日経BP刊)、「スマートフォン新時代」(NTT出版刊)、「ソーシャルラーニング入門」(日経BP刊)など。ウェブサイトはこちら / Twitter @taromatsumura