iPhone 8、iPhone 8 Plusのラインアップは、これまでよりも絞り込まれている。iPhone 7シリーズでは32GB、128GB、256GBという3種のストレージ容量を展開していたが、iPhone 8シリーズでは64GBと256GBの2タイプとなった。そして価格は、iPhone 8は699ドルから、iPhone 8 Plusは799ドルからとなっている。iPhoneの価格は、ストレージ容量が1段階上がるごとに100ドル価格が上昇するようになっていたが、iPhone 8シリーズでの価格差は150ドルと拡大している。そして、64GBモデルの価格は50ドル上昇した。
結果的に、ベーシックなモデルは値上げされるということになったが、最大容量となる256GBモデルで比較すると、iPhone 7もiPhone 8も849ドルと同じ水準になっている。最下位モデルが32GBではなく64GBとなったことは単なる値上げとも言い切れないが、容量はともかく、単純に最新iPhoneを購入したいという人にとっては、50ドル多く支払う必要が出る結果となった。
容量のバリエーションを3つから2つに減らした点については、カラーバリエーションを6色から3色に半減させたこととともに、生産体制の強化を狙ったもの、と見ることができる。2017年モデルのiPhoneはiPhone 8、iPhone 8 Plusに加えて、iPhone Xの3モデルが登場した。これらを確実に製造して供給する体制を整えるため、モデル展開を減らしたと考えて良い。
iPhone 7では、ベースモデルが32GBで、100ドル追加すると128GB、200ドル追加すると256GBとなる。しかしメモリのコスト自体が100ドル、200ドルと上昇するわけではない。これはすなわち、容量がより大きなiPhoneが売れれば、1台から得られる収益はより大きくなることを意味する。メモリ以外のパーツは変わらないからだ。
Appleがストレージ展開を3タイプから2タイプに減らし、64GBモデルと256GBモデルの価格差を150ドルにとどめたことで、容量が大きなモデルを売ることによる収益拡大の機会は減ってしまったと見てもよい。それ以上に、製品の供給を優先した点は、AppleがiPhone 8シリーズ、iPhone Xに関して、その販売台数という指標に厳しい目を向けている点がうかがえる。
ベースモデルの価格の上昇は、iPhone 8シリーズの製造コストが上昇したこととイコールだと思われる。新機種発売のたびに、iPhoneのパーツコストを試算するIHS Markitによると、iPhone 8 Plus 64GBモデルのパーツコストは288.08ドル。これに組み立てコスト7.36ドルを追加した295.44ドルが、799ドルで販売されるiPhone 8 Plusの製造コストとなる。iPhone 7 Plusの製造コストに比べて17.18ドル割高となっており、iPhone 7 Plus 32GBの価格から30ドル上昇した裏付けとなっている。
またiPhone 8の組み立てコストは247.51ドルで、こちらもiPhone 7と比較して9.57ドルの上昇。販売価格は50ドル上昇し、iPhone 8 Plusより大きく上乗せされている。iPhone 8シリーズで最も大きな変更が加えられたのは、背面がガラスとなったボディデザインである。またカメラは新しいセンサーとカラーフィルターを備えており、ディスプレイはカラーセンサーの追加によってTureToneディスプレイに対応して、HDR再生をサポートした。大きな機能の進化としては、ワイヤレス充電への対応がある。
そして、何と言ってもプロセッサ性能の向上は重要だ。近年のiPhoneが、他社のスマートフォンで大幅に勝る要因を作り出している核となる存在だからだ。A11 Bionicは省電力性に優れた4つの効率コアと2つのパフォーマンスコアを備え、特に効率コアの性能を7割高めている。また3コアのグラフィックスも自社設計とし、Metal 2や拡張現実を快適にこなす性能を備えた。このグラフィックス性能を活かして実現する機械学習処理は、秒間6,000億回にも及ぶ。本連載で、他社製のプロセッサがAppleのプロセッサに性能面で追いつくことはない、と指摘したが、A11 Bionicは端末販売全体でコスト管理をするAppleが自社設計しているから、そういう状況を生み出せるのだ。