Appleはプロセッサ、デバイスデザイン、iOSといったいわゆるスマートフォンプラットホームのハードウェア、ソフトウェア部分を自社で開発している。しかしそのスマートフォンを活用するアイディアの多くは、アプリ開発者に委ねているのだ。

iPhone 8には、iPhone Xと同じA11 Bionicプロセッサが搭載されており、拡張現実や3Dも快適にこなせる処理能力と、1秒間に6,000億回にも及ぶ機械学習処理を実現する、非常にパワフルかつ省電力性に優れたプロセッサだ。

しかしiPhone 8やiPhone 8 Plusは、背面がガラスに変更された以外のデザイン上の変化を、iPhone 7シリーズ、あるいはiPhone 6sシリーズから見出すことは難しく、iPhone Xと比較すると魅力に欠ける印象を持たれているようだ。その理由の一つとして、A11 Bionicで実現する世界を、アプリ開発者に任せっぱなしにしていることが挙げられる。

iPhone XのFace IDは、A11 Bionicの処理性能の恩恵を受け、顔面認証をより正確かつ高速に実現している。しかしFace IDに対応しないiPhone 8では、アプリ以外に、A11 Bionicだからこそという体験を生み出すのは難しいのだ。

また、ユーザーにとって、機械学習処理が高速だからと言って、すぐにメリットがあるかとなると、そうではない。例えばアプリ実行の背後で動作してカスタマイズされた最適な情報を提供するといった効果があるとしても、「お、ちょっと賢いかも」と感じる程度で終わってしまうかもしれない。

毎日、毎時間起動するアプリで、文字入力やメニュー選択などが機械学習によって省略されれば、その効果は毎時間10秒以上ずつの短縮となり、iPhoneでのアプリ利用がより快適に感じられるようになるはずではあるが、それでも、具体的に短縮する秒数を測ってくれる人はほとんどいない筈で、「なんかちょっと快適」という印象を上回る、劇的な変化を体験することはないとも言えよう。