Appleはよく、秘密主義、垂直統合、といったキーワードで語られる企業だ。ハードウェアとソフトウェアからユーザー体験を組み立てていき、ユーザーと開発者を自社のプラットホームに囲い込む、そんなビジネスモデルが、スマートフォン市場の立ち上がり以降、Appleの速度が速く堅実な成長を作り出してきた。
本連載でも紹介した通り、Appleはプロセッサも自社設計とし、いち早くスマートフォンの世界に64ビットプロセッサをもたらし、Androidスマートフォンから3年分のアドバンテージを作り出している。プロセッサ単体で利益を上げる必要がないことが、コストのかかったプロセッサ開発を可能にしており、こちらも垂直統合の結果、と見ることができる。
そういう状況下で、Androidを開発するGoogleも、Appleの垂直統合モデルを採用し始めた。自社ブランドのスマートフォン「Pixel」をリリースし、またGoogle Homeスマートスピーカーも投入済みだ。2017年はHTCのスマートフォン部門買収と、「Made by Google」ブランドの製品拡充から、その方向性を見出せる。
昨年、Googleは、Androidスマートフォンのフラッグシップモデルを担うPixel 2、Pixel 2 XLを投入。それぞれ5インチ、6インチの有機ELディスプレイを搭載するピュアなAndroidスマートフォンで、セールスポイントとなっているのはiPhone 8 PlusやGALAXY Note 8を上回ると謳うカメラ機能だった。
カメラはスマートフォンの機能の中でも重要な、人々が魅力に感じるものの一つといえる。Googleは人工知能を活かした画像処理を併用し、高品質の写真と、手ぶれ補正性能を実現した。これらのフィーチャーは、とてもGoogleらしいと言えるだろう。
しかしAppleのようにプロセッサの性能をアピールしなかった。Qualcomm Snapdragon 835を採用しAndroidスマートフォンの中では最上位だが、そもそもiPhoneが搭載するA11 Bionicとは勝負できないことが背景にある。
Pixel 2とともに発表されたスマートスピーカーGoogle Home Mini/Maxや、2-in-1ラップトップのChromebook、PixelBookなどの製品群を見渡すと、Googleのサービスやウリとしている人工知能「Googleアシスタント」を、どんなデバイスでも快適に利用できるようにすることを目指したことが伺える。
ハードウェアの基礎部分はこれからの取り組みとなりそうだが、スマートフォンやラップトップ、スマートスピーカーといったデバイスで動作するOS、ソフトウェア、クラウド環境に関しては、Googleのサービスで固められており、他のサービスやアプリが割り込む隙はない。
AIによる新しい体験を売りにするとしたら、Googleに対抗しうるプレイヤーはAmazonぐらいだが、Amazonはスマートフォンを持っていないため、そもそも勝負ができない。となると、Androidプラットホームで最も魅力的に展開できるのはGoogleのサービスであり、拡張現実検索を実現するGoogle Lensなど、その機能全てをいち早く体験できるPixelシリーズ以外の選択肢はないということになる。