キャリア主導モデルがスマートフォンの形を変える?

スマートフォンの進化という意味でもう1つ、注目すべきはキャリアの動向だ。昨年10月に、NTTドコモが2画面ディスプレイを搭載したオリジナルモデル「M」を発表したことが大きな話題となったが、今年は一層、キャリアがオリジナルモデルの開発に力を入れる流れが拡大すると考えられるからだ。

実はNTTドコモは、昨年発表した冬春商戦向けモデル11機種のうち、オリジナルモデルが5機種と、約半数を占めるに至っている。その理由は、端末の開発がメーカー主導となり、各キャリア共に同じ端末を取り扱うようになったため、端末によるキャリア間の差異化ができなくなってきたとNTTドコモが考えたことにある。

  • ドコモが発表した「M」の画像

    NTTドコモは冬春商戦に向けて発表した11機種のうち、「M」だけでなく約半数の5機種をオリジナルモデルが占めていた

しかも端末メーカーは、売上を最大化するため消費者のニーズに応える売れ筋のモデルの開発には力を入れるが、新しいコンセプトやデザインの端末の開発は、販売数が読めないためリスクが大きく、あまり積極的に取り組みたがらない。そうしたことから現在のスマートフォンは、基本的には“薄くて大きい板”をひたすら追求し続けるのみとなっており、それが端末の閉塞感をも生み出している。

そこで登場するのがキャリアだ。かつてのフィーチャーフォンのように、キャリアが自ら主導して端末を開発し、メーカーに製造してもらった製品を買い上げてリスクを担保することにより、意欲的な要素を備えた新しいスタイルの端末を提供するという取り組みが広がれば、そうした端末進化の閉塞感を打開する鍵の1つとなる可能性が高い。

こうしたキャリアの端末開発手法はかつて、キャリアがメーカーを縛る要因になるとして大きな批判を集めた。だがスマートフォンの進化に停滞感が漂っている現在、キャリアがリスクを取って新たなチャレンジをすることは、重要な意味を持つのではないかと筆者は考える。キャリア主導モデルの広がりを見る上でも、まずは今年発売予定の「M」をはじめとした、NTTドコモのオリジナルモデルの動向を追っていく必要があるだろう。