2017年の日本のPC業界は、業界再編が続いた。
2017年11月には、富士通の100%子会社である富士通クライアントコンピューティングに、Lenovo Group Limited(レノボ・グループ・リミテッド)が51%を出資し、レノボ傘下で事業を推進することなった。
また、経営再建中の東芝においても、パソコン事業売却に向けた動きが一部報道されるなど、パソコン事業再編の憶測が後を絶たない。
富士通クライアントコンピューティングが、レノボ傘下に入ったことで、日本のPC市場に大きな変化が起こることになる。
ひとつの陣営で4割を超えるシェアに
レノボは、2005年に、ThinkPadを擁するIBMのPC事業を買収したのに続き、2011年には、NECのPC事業を傘下に収めている。今回、富士通クライアントコンピューティングを傘下に収めたことにより、レノボおよびNECの合計シェアの25.6%に、国内第2位の富士通のシェア18.1%が加わり、43.7%のシェア(2016年度実績、MM総研調べ)に達する。
ひとつの陣営が4割を超えるシェアを持ったのは、1995年にNECのシェアが40.0%(データクエストジャパン=現ガートナージャパン調べ)となって以来、実に22年ぶりのものだ。それ以前は、NECが50%を超えるシェアを持っており、「ガリバー」と称されていた時代が続いていた。
富士通クライアントコンピューティングが、レノボ傘下で事業を推進することで、国内PC市場において、「ガリバー」に匹敵する一大陣営が、約四半世紀ぶりに復活する状況に至ったともいえる。
しかし、当時と異なるのは、1社ではなく、グループという点だ。そして、そのグループ構成もユニークだ。
たとえば、レノボ・ジャパンとNECパーソナルコンピュータの関係は、NECレノボ・ジャパングループとして、営業戦略やパートナー戦略を一本化しており、マーケティングやモノづくりにおいても連携している。体制が一本化しているという点で象徴的なのは、NECレノボ・ジャパングループでは社員を採用すると、全員がレノボ・ジャパンに所属し、そこから、レノボ・ジャパンか、NECパーソナルコンピュータのいずれかに配属になるという仕組みである点だ。会社やブランドは2つに分かれていても、事実上の一体経営となっていることを示している。
これに対して、富士通クライアントコンピューティングは、レノボ傘下に入っても、レノボNECグループとは、まったく別の組織体制となっている。
つまり、営業戦略やパートナー戦略、マーケティング戦略のほか、モノづくりに関しても、富士通クライアントコンピューティングは独自に行うことになる。レノボやNECブランドのモノづくりとは一線を画した体制が維持されることになるのだ。だが、OSやCPUなどの共通部品については、共通調達によって、コストダウン効果が見込まれる。バックエンドでの共通化によるメリット追求は行われることになるだろう。