AMDにとって2017年は、久々にx86 CPUマーケットでのシェアを明確に伸ばすことができ年であった。3月のRyzen 7を皮切りに、4月にRyzen 5、7月にRyzen 3、8月にRyzen ThreadripperとRyzen Proと矢継ぎ早に製品を投入し、市場に大きな存在感を示した。

  • キーボードやマウスを操作しようとすると文句を言われる

    キーボードやマウスを操作しようとすると文句を言われる。仕事が進まないことはなはだしい

さらには1P/2Pサーバー向けのEPYCも6月に発表しており、こうした製品投入がダイレクトに財務状況の改善につなっている(Photo45,46)。当然同社としてもこの勢いを今後もつなてゆくべく、2018年も積極的な製品展開を予定している。

  • 2017年第3四半期における売り上げ

    2017年第3四半期における、昨年度との売り上げ比較。Ryzen 7の売り上げはQ1には若干反映された程度であるが、そこから次第に伸びつつあるのが分かる

  • 第3四半期でついに純利益が出ている

    細かい数字であるが、第2四半期までは純損失が出ていたのが、第3四半期でついに純利益が出ている。そもそも昨年第3四半期のGross Marginの5%というのは凄まじい。同社のGross Marginのターゲットは40%だそうである

さて、2018年で最初に投入される製品は"Raven Ridge"ことRyzen mobileである。Ryzen mobileそのものは2017年6月のCOMPUTEXでダイも公開されており、出荷準備は着々と整っているようだ。現状、Ryzen 7 2700UとRyzen 5 2500Uの2製品が空かされており、4core/8ThreadのZen Coreに、Ryzen 7 2700Uは10CU、Ryzen 5 2500Uは8CUのVega Coreを統合する。

GPUのCU数はむやみに増やしてもメモリが追いつかないことになる(IntelのCore-Hと異なり、Local Memoryは搭載しない)から、落としどころとしてはこの程度が妥当なのかもしれない。

さて、このRaven Ridgeは別にノートPC専用というわけでなく、ダイそのものはデスクトップにも利用可能というのがAMDの説明である。実際、Ryzen 5はともかくRyzen 3ともなると、グラフィック統合ソリューションが強く求められており、ここにRAVEN Ridgeはちょうど当てはまる。

ただRyzen 3の平均小売価格は100ドル台である。実際競合はCeleronやPentium Goldになるから、このレンジに投入するとなると当然そういう価格にならざるを得ない。グラフィック性能でアドバンテージがあるといっても、デスクトップ向け製品として、200ドル台で販売するのは難しいだろう。

ところがノートPC向け製品だと、それこそIntelの第8世代Core i(400ドル台)と同等のCPU性能とより高いグラフィック性能を提供できるという位置付けとなり、多少割り引くにしても300ドル台は付けられるだろう。

一応黒字化下とは言え、まだまだ負債をたっぷり抱えているAMDとしては、まずは利益を稼げるところに製品を投入するのは当然である。おそらく2018年の第2四半期はノートPCのみで、デスクトップ向けSKUが登場する(Ryzen 5/3が予想される)のは早くて第2四半期末、現実問題としては第3四半期以降になると予想される。

12LPPを利用したZen+は第3四半期~第4四半期で出荷

その次に続くのがZen+コアである。こちらは先にプロセス解説におけるGlobalfoundriesのところで述べたが、12LPPを利用したダイを利用するものだ。マイクロアーキテクチャの大変更はなく、おそらくIPCの改善につなる若干の手直し程度と思われる。

このZen+コアを利用した製品は"Pinnacle Ridge"と呼ばれており、おそらくコア数は据え置き(メインストリーム向け製品として8core/16Threadで十分多い)で、多少動作速度の改善と消費電力削減といった形で差別化が行われるはずだ。

ちなみにRaven Ridgeは14LPPで製造されており、12LPPへの移行は後追いで、下手をすると2019年になるかもしれない。この12LPPを利用する製品は"Picasso"というコード名になっている。

Pinnacle Ridgeは、6月のCOMPUTEXでチラ見せ、あるいはベンチマークのデモなどが行われ、出荷は第3四半期~第4四半期というあたりになりそうだ。これはどちらかといえばGlobalFoundriesがどれだけ速く12LPPの量産ラインを立ち上げられるかに依存する。

おそらくAMDはとっくにTape outし、Risk Productionにもう入っていると思われる。プロセスそのものは14LPPの延長にあるので、そう大きな問題はないと思いたい。

Zen 2はGlobalFoundriesの7LP次第

ちなみにEPYCに関して、2018年中には大きな動きはないはずだ。こちらは12LPP(2017年の表現では14mm+)を利用せず、次は7nmになるという話が出ている。そんなわけで多少コア数や動作周波数を変えたラインナップが増えたりするかもしれないが、あってもその程度であろう。

なおAMDのロードマップでは、この後にZen 2が出ることが予定されているが、これは7nm、つまりArF+液浸を使った7LPを利用する形だ。従ってRisk Productionは2018年前半、量産は2019年からということになる。このZen 2コアを使った製品(コード名はMatisse)に関しては、2018年末にサンプルのデモなどが見られるかもしれないが、製品の入手は2019年までお預けになるだろう。