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坪田譲治
1965年生まれ、東京都出身。早稲田大学卒業後、89年にフジテレビジョン入社。以来、第二制作部(後にバラエティ制作センター)で、『なるほど!ザ・ワールド』『クイズ!年の差なんて』『新春かくし芸大会』『笑っていいとも!』『FNS27時間テレビ』など、『SMAP×SMAP』『もしもツアーズ』は立ち上げから担当し、06年に編成部に異動。その後コンプライアンスを担当する適正業務推進室長などを経て、17年7月から編成局制作センター第二制作室長(現職)。

このような、いわゆる"パイロット版"の番組は、MCに局アナを使うケースが多いが、今回は所にネプチューンなど、大物が続々と参加した。坪田氏は「やっぱり企画プレゼン大会で激戦を勝ち抜いた番組と説明したら、出演者サイドが面白がってくれる部分があったと思います」と分析。一方で、今回の取り組みはあくまで企画を重視するため、プレゼン段階ではキャスティング案まで要求しなかったそうだ。

フジテレビと言えば、『オレたちひょうきん族』に始まり、『とんねるずのみなさんのおかげです』『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、タレントが前面に立った番組のイメージが強いが、坪田氏は「実は『なるほど!ザ・ワールド』や『トリビアの泉』など、タレントさんに引けを取らない企画が出演者と二人三脚でマッチした時にも、いい番組がたくさん生まれてきたんです」と解説。「しかし、その考えが少しだけ薄れているように思えたので、企画力を強化することで元来あるタレント力との両輪にしていきたいと考えました」と狙いを語る。

また、今回"金メダル"を獲ったのが、ファイナリストで最も若い入社2年目のADだったことも、1つの成果になったそう。「いわゆる下剋上になったので、結果が出た後も、1・2年生たちは『次は俺たちも頑張れるんだ』と思ったのと、何しろ上が慌てましたね。『ヤバいぞ』という危機感が芽生え、そういう意味では良い刺激になりました」と話す。

河田町時代の"大部屋主義"復活を実践

プレゼン大会当日に集まったのは、編成や制作だけでなく、営業、総務、アナウンス、財務、CSRといった200人近くのさまざまなセクションの人たちで、会場の社内シアターは立ち見が出るほどの大盛況。

坪田氏は「最近のバラエティ制作は、作り手の顔が見えないとよく言われていたので、普段番組作りに関わっていない人にも多く来ていただいたので、そういった普通の視聴者の感覚に近い人たちの意見で番組が決まる形になったら面白いなと思ったんです。彼らにも選んだ番組の応援団になってもらえますし、第二制作室に若くて才能のある制作者が大勢いることを、社内にもアピールしたかったんです」と意図を明かす。

今年6月に就任した宮内正喜社長は、フジテレビ黄金時代を築いた旧・河田町社屋時代にならい、セクショナリズムを廃した"大部屋主義"復活を掲げており、今回のイベントはそれが実践できた格好だ。一方で、翌日には早くも外部の制作会社から問い合わせが。こうした試みは他局でも例がないそうで、「まだ1回目の放送前ですが、編成とはもう2回目をやる方向で動いています。年2回のペースでやっていくイメージです」と意気込む。

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第二制作室で進める変革

坪田氏は、バラエティ制作に復帰してから、今回のプレゼン大会の立案だけでなく、第二制作室の会議も、他局も含めた番組についての意見交換や、演出面での課題解決といったクリエイティブの議題を増やすなど、変革を進めている。

また、他局に比べて番組のネット連動が積極的でないという意識から、編成と広報を巻き込んだプロジェクトも立ち上げ、「来年以降、生放送で視聴者とインタラクティブな取り組みや、どの番組でもSNSのアカウントを作って、熱心なファンへの情報拡散や未視聴の視聴者へのリーチとしてネットSNS連動に本腰をいれたい」と意欲的。「フジテレビ・バラエティ班に伝統的に伝わっていたものが少し失われているように感じたので、それをあらためて再確認すること。一方で、今の世の中の流れにキャッチアップすることで第二制作室を引っ張っていきたいと思います」と語った。

フジのバラエティ制作者にとって、かつて『笑っていいとも!』(1982~2014年)が放送されていた時は、毎日さまざまなコーナーが放送されるため、「企画を考えるいいトレーニングになっていました。名作のコーナーはブラッシュアップしたら今でもゴールデンで当たるのではないかという企画もたくさんあります」と言い、今回の取り組みは、それに代わる場になる可能性も秘めている。

また、来年春には『とんねるずのみなさんのおかげでした』『めちゃ×2イケてるッ!』という長寿バラエティの終了が控えており、制作者の"世代交代"という意味でも、このプレゼン大会は重要な役割を果たしていくことになりそうだ。