低調だった序盤から、ジワジワと盛り上がっていく様子が顕著だったのは、ともにTBSの4月期である藤原竜也主演『リバース』と、波瑠主演『あなたのことはそれほど』だ。
『リバース』は、同局で湊かなえの原作をドラマ化した『夜行観覧車』(13年)、『Nのために』(14年)に続く最新作で、前作はいずれも視聴者から高い評価を受けてきた。そのため、今作に対する期待値もかなり高く、「期待していたが、途中で飽きてしまった」(68歳女性)、「期待ハズレだった」(49歳男性)など、事件の発端を描くミステリーの初回ということもあり、単調に感じてしまった視聴者が多く、初回は3.51と低調なすべりだしとなった。
しかし2話以降、深まっていく謎と徐々に明かされていく事実に視聴者は夢中となり、2話以降は一度も3.9を下回ることなく、第7話から第9話まで、3回連続で最高値の4.28(『陸王』最終話の暫定値と同率)を記録。まさに、視聴者が最もハマった作品となった。
『あなたのことはそれほど』は最近流行中の"不倫ドラマ"だが、波瑠演じる主人公が全く悪びれることなくそれに興じるという斬新なキャラクター設定ゆえに、「ストーリーが軽すぎる」(45歳女性)、「浮気してるのに平気な感じが今どきなの?」(49歳女性)など、視聴者からなかなか共感を得られず、初回満足度3.19とかなり低いスタートを切った。
だが、徐々に東出昌大演じる夫の狂気が見え始め、妻に天罰が下っていく展開に差し掛かると、「だんだん面白くなってきた。旦那、恐い。真面目な人ほど恐い」(55歳女性)、「ミツ(主人公)はどこまでクソなんだと呆れながらも来週も楽しみ」(55歳女性)など、東出の怪演も相まって、斬新なキャラクターさえもやみつきになる視聴者が急増した。最終回前の第9話で最高の3.90を記録し、最低だった初回からかなり振れ幅の大きい作品となった。
"珍推移"を見せた『奥様は、取り扱い注意』
初回に高数値を記録するも、失速してしまい中盤で最低を記録、しかしその後急上昇するという珍しい推移たどったのが、綾瀬はるか主演『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ、10月期)だ。
満足度は初回から、3.72 → 3.67 → 3.68 → 3.75 → 3.66 → 3.57 → 3.70 → 3.84 → 3.78 → 3.68。初回は高満足度の基準をクリアするも、2話以降は浮き沈みを繰り返し、第6話では自己最低になってしまうが、後半で盛り返していった。
その理由を視聴者の感想を追って探ると、高満足度を記録した初回では「綾瀬はるかさんのアクションが凄い」(46歳女性)、「やっつける場面が爽快」(53歳女性)など、前半はホームドラマ×アクションという新鮮なテイストに評価。一方、満足度が最低だった第6話では、「今回はテーマが重かったので暗い雰囲気だったのが残念!」(61歳女性)、「いくらひどい被害者だからって、犯人が捕まらない展開は良いのか少し疑問が残った」(37歳女性)など、中盤はややダークな内容に偏っていったことと、爽快な展開が見られず、視聴者のテンションを下げてしまった。
しかし、最高値を記録した第8話では「やはり旦那様も普通ではなかった。伏線がたくさん張られているので、今後が楽しみ」(36歳男性)、「前半は綾瀬はるかのアクション以外はまったりしていてつまらなかったが、後半は夫が怪しく見えてきたりサスペンス要素が出てきて面白くなった」(40歳男性)など、後半は怪しげに描かれてきた主人公の夫の素性を描いたことで視聴者のテンションを取り戻したようだ。10話近く続く連続ドラマにおいて、高満足度をキープさせることがいかに難しいかを示したドラマだった。
その他、全156話中最終回の満足度が最も高いという、美しい着地をみせた有村架純主演のNHK朝ドラ『ひよっこ』(初回3.57→最終回4.12)。満足度3.89とドラマ通のみならず多くの視聴者をうならせた松たか子主演『カルテット』(TBS)、ゴールデン帯に深夜ドラマのゆるさを取り入れて満足度3.76と成功させた堤真一主演『スーパーサラリーマン佐江内氏』(日テレ)、浅野忠信民放ドラマ初主演で映像もストーリーも映画的な奥行きで視聴者を魅了し、満足度3.85と好調だった『刑事ゆがみ』(フジ)など、満足度という点で見ると良作はまだまだあった2017年。来年も豊作を期待したい。