2つ目の出来事は、外部人材の積極的な登用だ。その象徴的な例が、IT業界からパナソニック入りした2人の外様だ。
1人は、代表取締役専務の樋口 泰行氏、もう1人は馬場 渉氏である。
樋口氏は、2007年から2015年まで日本マイクロソフトのCOO、社長を務めたのち、3月まで会長として活躍していた。4月の入社後はパナソニックのコネクティッドソリューションズ 社長に就任し、さっそく東京に同カンパニーの本社機能を移転した。「門真発想のままでは限界がある」として、物理的な仕掛けも加えながら、パナソニックが持つ伝統的な姿勢や考え方を根本から変える取り組みを開始している。松下電器産業に新卒で入社した樋口氏だからこそできる改革にも期待したいところだ。
一方で、SAPジャパンのバイスプレジデントから転身した馬場氏はビジネスイノベーション本部 副本部長に就任。シリコンバレーに拠点を置き、シリコンバレー流のデザインシンキングなどの手法を持ち込み、パナソニックのモノづくりを変えようとしている。先頃発表した「Panasonicβ」はその取り組みのひとつだ。
いま、パナソニック社内には、「タテパナ」と「ヨコパナ」という言葉がある。
従来のような事業部を中心とした垂直型の組織構造によってビジネスを行うのが「タテパナ」。そして、横のつながりをベースにして、既存の枠にとらわれない仕組みで、新たなものを生み出すのが「ヨコパナ」だ。「タテパナ」と「ヨコパナ」がつながる体制を作り上げたことで、スピード感を持った開発はすでに実証した。あとはこれを短期間に事業化し、収益につながる仕組みに発展させることができるかが鍵だ。
100周年は通過点でしかない
最後の出来事は、100周年を機に開発した「Creative! セレクション」だ。第1弾の商品群では、ななめドラム洗濯乾燥機やロボット掃除機、ルームエアコンなど、13商品を発表した。
残念ながら、第1弾の商品そのものはインパクトが欠ける。ただ、約3年前から新たな家電商品の開発を進めてきたなかで、「モノづくりの会社から、コトづくりの会社」へと移行する仕掛けがいくつか用意されていた。「成果」と呼べるレベルのものが明確には見えていないものの、ちょうど100周年となる3月には第2弾の商品が発表される予定だ。
そしてパナソニックは100周年を「区切り」ではなく「通過点」と捉えており、Creative! セレクションは2020年まで継続して発表していくという。同社は2018年度に、4500億円以上の営業利益を目標に掲げている。「増収増益に転じる年」とした2017年度業績見通しからは約1000億円の積み上げが必要という高いハードルにパナソニックは挑むことになるが、創業100周年をどんな姿で迎えるのか。
100周年の節目を迎える2018年の新たな一手を明確に打ち出せるのか、注目しておきたい。