2017年の家電業界はある種堅調な一年だったようにも思える。

シャープは12月に東証一部復帰を果たし、復活が鮮明となった。一方で、再建に向けた動きが迷走を続けた東芝だが、ウェスタン・デジタルとの訴訟リスクを回避し、日本を主軸とした投資連合からの資金調達がうまく行けば、ようやくその道筋に決着がつくという段階に入ったと言えよう。

そうした中で、2017年度末の2018年3月にパナソニックは創業100周年を迎える。この老舗企業もまた、地道ながらに、そして着実に体質転換の成果を挙げた1年だったと言えるだろう。

テスラとトヨタ、車載事業で大規模提携

米ネバダ州 ギガファクトリー

パナソニックの1年間は、その軌跡を3つの出来事に集約できる。その一つは成長分野として経営資源を集中させた車載事業だ。

2017年1月に米テスラとの協業を発表し、米ネバダ州の「ギガファクトリー」でテスラ向け二次電池の生産に乗り出した。そして先日発表された同じく電池分野におけるトヨタ自動車との協業は大きな話題を呼び、電池分野のトップランナーとしての面目躍如といったところだろう。

車載事業は、2018年度に2兆円の売上高を目指しており、そのうち93%が受注済みという高いレベルにある。そうした事業環境に加え、「次の成長」を見据えてテスラやトヨタとの提携にこぎつけたことは、今後のパナソニックに大きな意味を持つ。両社は自動車業界に対するビジョンやリーダーシップを発揮するポジションにそれぞれ立っており、業界全体への影響力を持つためだ。

一方で、テスラのモデル3は生産の自動化が遅れ、量産体制が未だに整っていない。これを「テスラリスク」として業績圧迫への懸念を示す声もある。パイの拡大や業績安定を図るためにも、この2社との提携を軸に、戦略的提携を他メーカーまで拡大できるかが当面の課題だろう。

もちろん、パナソニックは車載ビジネスの可能性を電池分野までに留める考えはない。

代表取締役社長の津賀 一宏氏は、近い将来におとずれる自動運転時代に、車内空間が「走るリビングルーム」になると語っている。エンジン音がなく、ガラス部分が少なくなれば、オーディオルームとしての進化が見込まれる上に、「空質」の提案や家電製品が応用できる範囲も広がる。

走っている時のみならず、自宅に駐車している際にも、ひと部屋増えたような形で居住空間の提案できるようになるというビジョンもある。「ここ(居住空間の提案)に入れば、それはパナソニックの得意分野。新たなビジネスを作ることができる」(津賀氏)というわけだ。

  • 提携を発表したトヨタ自動車とパナソニック。両社社長の豊田章男氏(左)と津賀一宏氏(右)が最初に出会った場所は、豊田佐吉記念館だったという