一方で、この技術説明会の目玉は、仮想現実ヘッドマウントディスプレイ(VR-HMD)専用の3.6型803ppi低温ポリシリコンTFT液晶ディスプレイだった。2018年春にサンプル出荷を開始し、2018年上期には1000ppi超のディスプレイを開発する予定だという。
「VR酔いなど、ユーザーの目や脳に負担をかけないためにVR-HMDが必要だが、現在のスマートフォンディスプレイでは不十分。スマートフォンディスプレイをVR向けに改良するか、VR専用機が必要である」(瀧本氏)という環境のため、同社はVR専用機向けの液晶ディスプレイを投入し、市場ニーズに対応していく。
JDIのVR向けの取り組みでは、2016年10月に「651ppiのVR専用機向け液晶ディスプレイ」を製品化し、すでに量産体制に入っているが、「レンズ越しに見ると、画素の固定パターンが見える場合がある。今回発表した803ppiの精細度を実現することで、画素の格子が固定パターンとして見える現象の『スクリーンドアフェクト」がなく、画像のリアリティを向上できる」(JDI ディスプレイソリューションズカンパニー ディスプレイソリューションズ 第1事業部 商品部応用技術1課 課長 原山 武志氏)という。
ただし800ppiがゴールではなく、HMDを小型軽量化するためにはディスプレイを小さくし、レンズの倍率を大きくする必要がある。これには1000ppi以上の高精細化が必要であり、実際に引き合いもあるという。
「(1000ppi級では)画像のリアリティを追求できるだけでなく、ディスプレイの解像度を維持したまま小型化、さらにはコストダウンにもつながる」とし、「ジャパンディスプレイは、VR専用高精細ディスプレイ分野において、リーディングポジションを維持していきたい」と原山氏は話す。
ただ、VR-HMD市場は市場全体の動向が読みづらく、調査会社によって需要動向にばらつきがある。その点については「300ドル以下の手頃な価格の製品が出始めたことで、ハードウェア市場がようやく広がる気配が出てきた。2018年以降の立ち上がりが期待できる」とした。
技術的な課題では、表示解像度だけでなく、データ量や転送速度の課題もあり、有線ケーブルによるHMDシステムが主流となっている。この点については、スマートフォン向けに5Gが2020年より提供されるため、アプリケーションやサービスの広がりが生まれ、ひいては「VR-HMD専用機の市場拡大が見込まれる」と予測する。これらの市場予測から、同社はVR-HMD専用機市場で、2018年度に数十億円規模の売り上げ規模を目指す。