『オーファン・ブラック ~七つの遺伝子~』(東海テレビ・フジテレビ系 毎週土曜23:40~24:35・全8話)で初の連ドラ主演を務める女優・知英(23)。先月29日に都内で行われた制作発表会見では1人7役の不安と覚悟を語り、東海テレビの松本圭右プロデューサーは「こんなにも大変なのかという日々を過ごしている」と報告すると共に常に前向きな姿勢の知英に感謝した。この日、誕生日でもない彼女に用意されたサプライズケーキからはスタッフ愛を感じる一方、それだけ過酷な現場であることをうかがわせた。
振り返ると、知英の目の前には次々と壁が立ちはだかり、彼女はそれらを不屈の精神で乗り越えてきた。韓国ガールズグループ・KARAを経て、2014年から活動拠点を日本に移し、日本語での演技に果敢に挑戦。『民王』(15・テレビ朝日系)では元警察官僚で政治家の男と体が入れ替わるという難役も見事に演じてみせた。昨年6月にはミュージカル『スウィート・チャリティ』にも出演。初舞台にしての初主演は、相当なプレッシャーだったに違いない。
そして今年5月、初ソロツアーの最終公演で流した涙。ステージ上の知英は「いろんなことが込み上げて」と恥ずかしそうにしていたが、こうして軌跡を重ねるとその言葉の深みが増していく。果たして、あの涙にはどのような感情が表れていたのか。『オーファン・ブラック』の会見直後、1人7役で奮闘中の彼女と対面し、涙の真意を探った。
背中を押したマネージャー「絶対にやったほうがいい」
――とても内容の濃い会見でしたね。サプライズケーキもありました。
本当にうれしかったです。何でこんなにみなさんが愛を……「愛されすぎて恐い」というのがよく分かります。どうやって返せばいいのかなと。
――どのような時にスタッフ愛を感じるんですか?
例えばカメラマンさんや監督。監督は「知英さん、何でもOK!」「お芝居優先だから、みんな! 知英さんのことはほっといて!」、カメラマンさんは「僕は知英さんのためならケガしてもいいので、思いっきりやってください」とか言ってくださるんです。そんなこと今まで言われたことなかったので、本当にみなさんに愛されてるんだなと思って。だから、がんばれます。
――そのお返しに困っていると(笑)。
そうです(笑)。がんばって良いお芝居をするしかないかなって思ってます。
――ドラマの出演が決まった時、「私でいいの?」と思ったそうですね。
マネージャーさんからは「これからのためには絶対にやったほうがいい」と言われて、それに対して私はもちろんOKだったんですよ。でも、本当に自分ができるのか不安ばかりで、原作ドラマを観ると主演の方のお芝居がすごく上手で、いろいろな役を演じ分けていて……。
英語、韓国語、日本語のほかに方言まである。どのくらい準備があるのかな……と思ったら、「来月インです」と聞いて、「えーっ!」って叫びたくなりました(笑)。
一人になって気づいたこと
――2014年8月に活動拠点を日本に移して、当然言葉の壁もあったと思います。でも、その後も数々の壁を着実に乗り越えてこられた。以前、取材した際にも「難しいことを楽しむ」とおっしゃっていましたね。
今も同じ気持ちです。逆に難しいことがあったからこそ今の自分があるというのも、またさらに気づいたことで。難しいことがないと成長できないと思います。でも……今回は別物なんですよ(笑)。どうやったら乗り越えられるのか、毎日毎日考えています。
――根はポジティブな方ですか?
ポジティブに生きるしかないですね。この仕事はネガティブになると何もできないと思うので(笑)。でも、自分はどちらかというとポジティブな方。たぶん、一人になってからそうなったんだと思います。グループの時、自分が知らない間に周りの人たちがすべて解決してくれていたんです。その上で、私たちは今まで練習してきたことをステージでパフォーマンスする。それはもちろん大事なことなんですけど、それ以外の大事なことに気づいていなかったというか。周りのスタッフさんがどれだけ頑張ってくれているのかとか、自分がもっと責任持ってやらなきゃいけないとか、一人になって気づくことができました。だからこそ、難しいことがあるのは当たり前のこと。それを乗り越えてまた次に。一人になったからこそ気づいたことでした。
――大変なことがあっただけ、得るものがあったと。
はい。でも、今回は……プラスになるのか、マイナスになるのか。私次第だと思います。視聴者の方が観てくださってからじゃないと分からないです。