青春18きっぷがあれば、格安で海外に行くことができる−−。そんなユニークなキャンペーンを行っているのが、山口県の下関港と韓国の釜山港を結ぶ関釜フェリーだ。下関港を毎日19時45分に出港し、翌朝8時に到着する定期船で、2013年から毎年春夏冬の3回、「青春18きっぷ旅大応援キャンペーン」を開催している。
これは、電話予約のうえ青春18きっぷを下関港の窓口で提示すると、2等運賃が半額の4500円(通常9000円)になるというものだ。往復で購入すればわずか9000円+港湾使用料で海外旅行ができる。正規運賃での差額を支払えば、一等や特等も利用可能だ。提示する青春18きっぷは、そのシーズンに有効なきっぷであれば良く、すでに5回分使い切っていても構わない。
青春18きっぷと海外旅行。一見、無関係に思える組み合わせだが、発売の意図はどこにあるのだろうか。関釜フェリー旅客営業課の中野洋平氏は、「私自身が、学生時代からずっと使い続けてきた青春18きっぷのヘビーユーザーだからです」と語る。意外にも、レールファン寄りの発想から生まれた商品だという。
「大阪を朝8時頃に出発すると、山陽本線の普通列車を1日乗り継いで、関釜フェリーに乗り継げるんです。そこで、18きっぷを1日分使い切って、当社のフェリーに乗っていただこうという発想が出ました」。
欧亜連絡ルートの名残
もちろん、それだけではない。下関~釜山航路は、戦前には日本とヨーロッパを結ぶ欧亜連絡ルートの一部だった。第二次世界大戦勃発までは、東京駅などの主要駅で、日本から釜山、ハルビン、モスクワを経由してパリまでの「欧亜連絡乗車券」を購入することができたという歴史がある。東京~パリ間は最短16日かかったが、45日かかる船よりも圧倒的に速かった。
「飛行機ではなく、昔ながらの列車と船で海外に出かけるという”旅”を、商品化したいという思いがありました」。列車と船を乗り継いで韓国へ出かける商品といえば、JR発足直後に発売された「日韓共同きっぷ」があった。しかし、格安航空券の普及によって相対的に割高となり、商品力を喪失。販売区間が縮小され、2015年に廃止されている。一方で、列車と船を乗り継ぐ旅には独得の旅情があり、一定のニーズがある。JRとの共同商品の開発には大規模な手続きが必要だが、自社のみの割引キャンペーンなら、比較的容易に実施できる。
2隻あるフェリーは460~562人と十分な収容力があり、思い切った割引が可能だった。こうして2013年春期から「青春18きっぷ旅大応援キャンペーン」がスタートした。