かつては子どもの頃に発症しても、自然治癒していくと言われていたアトピー性皮膚炎。だが、今は大人になっても症状が治まらない人や成人後になって発症する人が急増しているという。

今回は東京女子医科大学皮膚科教授・講座主任の川島眞医師に大人のアトピー性皮膚炎の対処・予防法についてうかがった。

  • アトピー性皮膚炎への対処方法を知っておこう

    アトピー性皮膚炎への対処方法を知っておこう

アレルギーへの対処法が大事

アトピー性皮膚炎を発症するとその原因を探り、アレルギーの原因を無くすことを考えがち。だが、アトピー性皮膚炎はさまざまな要因が複合的に重なって現れるため、 アトピー素因を取り除くことはもちろん、100%の除外は難しいとされている。そうなると、「アトピー性皮膚炎は治せないのか? 」と感じてしまいそうだが、アトピー性皮膚炎を回復することは充分に可能なのだという。

川島医師は「アトピー素因を100%取り除くことは難しいですが、悪化要因に対する対処法や予防策を知っているだけで、アトピー性皮膚炎の症状を回復することはできます」と話し、アトピー性皮膚炎の主な症状である「かゆみ」と「炎症」は取り除けると説明する。

そのためには、「かゆみのもととなる炎症を止めること」と「肌の基礎力を高めるための対処を行うこと」が重要であるという。

かゆみを止める方法は薬を正しく使うこと

まず、炎症や炎症に伴うかゆみを止めることから知っておこう。アトピー性皮膚炎は、軽い炎症でもかゆみを生じて皮膚をひっかいてしまい、その結果、激しい炎症や色素沈着を起こしてしまう。特に肘の内側、膝の裏側など皮膚の弱い部分は要注意。かき続けると、症状が悪化してしまう。

現在、かゆみを軽減する薬として医療現場で推奨されているのは、かゆみを抑える飲み薬や患部に塗るステロイド剤だ。ただ、ステロイドと聞くと「怖い」「肌がただれる」などのイメージが先行し、薬の使用を控える患者もいるとのこと。

それでも、ステロイドは医師の指導のもとで正しく使えば、かゆみや炎症を抑えられる効果が期待できる薬だ。刺激もなく、小さな子どもでも使用できるため、慎重に減らしていけば炎症を繰り返すこともなくなる。過去のイメージや間違った認識で使わないというのはもったいない話と言えるだろう。

  • ステロイドはアトピー性皮膚炎のかゆみを抑える効果が期待できる

    ステロイドはアトピー性皮膚炎のかゆみを抑える効果が期待できる