この取り組みを後押しするのは、以下の4社。広告代理店の電通、東京急行電鉄、日本経済新聞社、ガスプロム・メディア・サブホールディングスだ。最後の1社は、なかなか聞きおよばないが、ロシア最大のメディア企業。ロシアでテレビ番組や映画などを手がけている。
こうした4社のなか、やはり異色に感じるのは東急電鉄だろう。東急電鉄は、関東、特に東京から南西部を拠点にする私鉄だ。ロシアとの関わりはあまり考えられない。その同社がなぜこの取り組みに参加しているのか。
文化振興に力を入れる東急電鉄
実は東急電鉄は、鉄道事業の売り上げは20%を割っている。不動産やそのほかの事業での売り上げがほとんどだ。そのうちのひとつが、文化促進。たとえば渋谷駅から歩いて7・8分の距離にある東急文化村だ。ここでは、映画上映のほか、展覧会や美術館といった文化的な事業を手がけている。
そもそも、演奏会が開催された渋谷ヒカリエも、もとは東急文化会館の跡地に建てられたビルだ。東急文化会館にはプラネタリウムがあったり、映画館があったり、書店が入居したりと、文化的な彩りが濃かった。
つまりだ。東急はグループを通じて文化に対しての理解が深く、今回の日露文化交流に対しても、何かと協力していく考えだ。ちなみに、この文化交流は、5年という長いスパンで続けられる。
さて、冒頭の演奏会に戻ろう。素敵な楽曲が流れるなか、品のない考えが頭をよぎっていた。ストラディヴァリウス・アンサンブルと銘打ったこの楽団では、何挺のストラディヴァリウスが鳴らされているのか。1挺ウン億円とすれば、3・4挺もあれば二桁億円を超える。それが、7メートルほど先で演奏されているのだ。世界で約600挺しか残っていないストラディヴァリウスには、文化的な価値のほかに、こんな不遜な考えを生じさせる効果もあるのだなと思った。