急拡大で見えていたほころびの数々
だが同社のこれまでの動向を見ると、事業の不安定さや、強引さがいくつか見られたのもまた事実である。サービス面に関して言えば、2016年に実施したエムティーアイの音楽配信サービス「music.jp」との連携施策「最大3年間0円キャンペーン」で、3年間0円から利用できる代わりに、music.jpに強制加入させられることが「抱き合わせではないか」と批判を集めた。また今年3月に打ち出したセット販売施策「スマートコミコミ+」でも、継続的に端末を買い替えなければ通常の倍近い端末代金を支払わなければならず、実質的な“3年縛り”ではないかとして批判を集めている。
端末事業に関しても同様だ。いくつかのモデルは発表時に発売日が明らかにされず、いつ販売されるのか分からないケースがあったし、コンパクトな音声通話端末「Simple」は2度発売が延期された上、発売された台数も非常に少なく、すぐ完売してしまったことで話題となった。また2016年に発売された「REI」は、6月に追加色として「メタルレッド」を提供することを明らかにしたものの、その半年後には発売を中止するなど、不安定な様子を見せていた。
そして極めつけは、Webサイトの表記に関して誤認を招く表記がいくつかなされていたとして、4月に消費者庁から景品表示法違反を指摘されたことだ。この出来事がプラスワン・マーケティングの信頼を大きく落とし、破綻に至るきっかけになったと言われているのだが、改めて振り返ってみると、それ以前にも急速な成長を求めるがあまりのほころびが随所から見えていたわけだ。
もちろんプラスワン・マーケティングの契約数が伸び悩んだのには、大手キャリアがサブブランドを強化したり、通信料を引き下げたりするなどして、MVNOへの顧客流出を大幅に抑えたことが影響しているのは事実だ。だが同社に関して言うならば、本来小さな会社であり企業体力が弱いにもかかわらず、成長を急ぐあまり身の丈に合わない事業展開をした結果、無理が目立って信用を落とし、破綻に至ったといえそうだ。
大手キャリアの攻勢によってMVNO、そしてSIMフリースマートフォンを取り巻く状況は非常に厳しくなっている。だがそれだけに、これらの事業に係る企業には、成長を追い求める攻めの施策だけでなく、顧客からの信頼を得て継続的な利用につなげる、守りの施策も同時に求められていることを、忘れてはならないだろう。