説明会には、ゲストとして理化学研究所(現在は京都大学医学部付属病院に出向中)の種石慶氏がAI創薬について説明した。新薬の開発には医薬品メーカーが数万の化合物をライブラリとして持ち、これに対して生体内のたんぱく質10万種類から病気治療に見合った組み合わせを見つけるところから始まる。
この候補を実際の細胞や、モデル動物、そして臨床試験をへて承認が得られるとやっと新薬として認められるのだが、これには長い開発プロセスがあるというのは言うまでもない。
製薬業界が抱える共通の問題として、研究開発費が増える一方で新薬承認数は横ばい、つまり新薬の開発コストが上昇している事が挙げられる。新薬として承認されるのは平均すると2.5万の候補からたったの1つで、開発コストは1,200億円以上と膨大な上、開発期間も10年以上と長い。
また残された創薬テーマは実現が困難なものが多く、最適な組み合わせを見つける事自体が難しい上に、製薬会社のライブラリ化合物から候補が見つかるという保証もない。臨床試験の最終段階で問題があると判断されればそこまでにかけた費用は無駄になると創薬がハイリスク、ハイリターンな世界であること強調する。
そこで期待されるのが計算創薬というもので、計算機上でバーチャルに薬を作成し、相互作用を計算。シミュレーションだけで推測することで物理的な実験を削減するというものだ。2012年のMERCKによる分子活性値予測コンテストでディープラーニングを導入したチームが優勝したことをきっかけで機械学習を利用した創薬応用が期待されるようになったという。
製薬業界やITベンダー、スタートアップを対象としたLife Intelligence Consortiumを2017年10月に発足。89の企業・団体が参画した。非競争領域ではモデル開発を行い、原則としてその成果を公開。その結果を競争領域に持ち込むことで促進を行うとともに、日ごろIT業界と付き合いのない製薬会社と技術のあるITベンダーやスタートアップを結びつける。
なお、創薬AIの各ステージを短縮する方法論を提供するので、実際に創薬AIが市場に出る際にすべてのステージでAIが使われるとは限らないそうだ。