――いたずらにお互いが敵対するばかりでなく、主義主張が違えども必要なときには力を合わせるなど、それぞれの仮面ライダーたちの強い個性がぶつかりあうドラマは非常にスリリングで魅力的でした。放送が1クール(1~12話)を過ぎ、年明けの放送あたりからは次のエピソードでキャラクターがどんな動きをするのか、気になって仕方がないというファンの声も一層高まっていきました。
高橋:仮面ライダーの数が多いだけ、それぞれの物語を描くことのできるキャンパスがあった、というのが『エグゼイド』の楽しさ、面白さにつながったんじゃないかと思います。テレビシリーズで追い切れなかったキャラクターに関しては、ネットムービーやBlu-ray映像特典といったスピンオフ作品が作られたりして、いろんな媒体をひっくるめて『エグゼイド』の世界が描けたのではないでしょうか。スピンオフに関しては、せっかく作るのだから観てくださる方たちに「お得感」を抱いていただく一方で、これを観るとテレビシリーズに戻ってみたくなるという楽しみ方ができる物語を目指していました。
――『エグゼイド』ではガシャット、『ビルド』ではフルボトルといったアイテムを組み合わせ、さまざまなフォームチェンジを行うのが番組の特色です。お話の中でどういうフォームが出てくるかということについてはシナリオ執筆の前段階で決まっているとうかがっていますが、こういったアイテムを取り込みながらストーリーを作ることについて、どのような難しさがあるでしょうか。
高橋:「仮面ライダー」という番組がそういうものだと思っていましたから、新フォームや新アイテムの展開をお話にどう組み込んでいくか、というのを一番の楽しみにしていた部分がありました。むしろ、ほかのテレビドラマでは出来ないことですからね。『エグゼイド』をやっていて苦しかったことといえば、1年間のロードマップを作っていても、人気や展開次第で予期していなかったものが生まれてきて、漠然と「この先はこういう展開に……」と思っていたことを変更したことですかね。でも、それもいい意味でドラマの盛り上がりに応じて変えていくことができたので、もう全体的には楽しいことしかなかったです。
武藤:確かに新アイテムや新フォームをどう出すか、というのは「仮面ライダー」でしかなしえない思考ですね。『ビルド』が『エグゼイド』と大きく違うのは、現在登場しているライダーは主人公の仮面ライダービルドと、第11話(11月19日放送分)からの仮面ライダークローズの2人だけだということ。序盤はビルドのフォームチェンジを見せていく展開なんです。やっていて功を奏したのは、新アイテムを作り出すのが主人公(桐生戦兎)という部分で、これは今までの平成ライダーシリーズではあまり例がありません。ただのアイテムではなく、"戦兎が作り出したモノ"という要素があるから、あえて物理学的な要素を組み込まなくても戦兎が「天才物理学者である」という部分が表現できる利点があるんです。毎回、新しいフルボトルを生み出しながら、新しいフォームへチェンジしていく。こういう要素を組み入れながら話を作るのは楽しい……のですが、ただ楽しいというだけではないです(笑)。
――特にフルボトルによるフォームチェンジは最初の「ラビットタンク(ウサギ+戦車)」から始まり、第2話でゴリラモンド(ゴリラ+ダイヤモンド)、第3話でホークガトリング(タカ+ガトリング)と、奇抜な組み合わせが「ベストマッチ」として登場しますから、これをストーリーに反映させるのは大変なんじゃないかと思ってしまいます。
武藤:ほんと、そう思いますよね。第5話のニンニンコミック(忍者とコミック)なんて、どうやってお話に組み込んだらいいの?って(笑)。実は、そこにはトータルとして意味があるのですが、今のところは「これって何なんだ?」というアンバランスさと、フルボトル同士のベストマッチを探すという部分の面白さを観ていただければと思って書いています。まあ、好きで飛び込んだ世界なので、あまり「大変だ」とばかり言えないですよね。