ウェザーニューズと新たに提携
順調に進化を続けているKDDIのドローンだが、今回新たにウェザーニューズと提携することで、気象情報を運航管理に加えることができるようになった。ウェザーニューズが持つ天候情報や突風警報などを元に運航管理システムがルートの変更や避難指示などを出せるようになり、より安全な運航が可能になる。
ウェザーニューズはこれまでも全国のau基地局3000局に気象観測装置を設置した「ソラテナ」システムを構築しており、気象庁よりも細かな単位での気象予測を可能にしている。今後はこうした観測装置をさらに小型化して設置を増やしつつ、リアルタイムな天候情報をドローンに提供して自律飛行のサポートを行うという。
ウェザーニューズは都市部において路面の温度を計測し、それを元にビル街での乱気流が発生するシミュレートなどを行なっており、こうしたデータは都市部における自律飛行では必ず必要なものになる。また、ドローン自体を観測装置と見なせば、観測網ネットワークをより精度の高いものにできるなど、相互効果が大きい。気象情報はドローンの運航に際して非常に大きな要素となるため、国内有数の天候観測能力を持つウェザーニューズとの提携は大きなアドバンテージになるだろう。
KDDIが考えるスマートドローン網の価値
KDDIは通信ネットワークインフラの一環として、全国にネットワークセンターを展開しているが、スマートドローン構想においては、このネットワークをドローン網のインフラとして活用することを計画している。
たとえばネットワークセンターはドローンのステーションとして、駐機・充電、点検整備、セッティング、遠隔監視などの拠点として利用する。また各基地局にはドローンポートを設置し、退避・駐機所や無人の充電ステーションとして利用する。こうして全国にある基地局などの施設を有効活用し、メッシュ状のネットワークを構築するわけだ。
ドローン単体の航続距離は短くとも、途中で充電しながらであれば数百キロの飛行も可能になる。また急な天候の変化なども、近くのドローンポートに避難できれば、破損や墜落の確率が減らせる。全国に基地局という形で不動産を所有しているKDDIならではの強みと言えるだろう。またKDDIは東京電力との間にも協力体制を築いており、将来的には、たとえば高圧送電線に沿った飛行ルートを設定する、といったことも考えられるだろう。これもまた他社にはない強みのひとつだ。
ドローン物流というと、搭載重量の制限や航続距離の問題などもあり、限られた場面でしか活躍できないようなイメージがあったが、メッシュ的なネットワークが組めるのであれば、無理に距離を伸ばさなくとも、ステーション単位で飛脚のようにリレーしていく方式なども考えられる。また災害時の現場確認なども、最寄りのステーションやポートのドローンが素早く向かうことで効率を高められるだろう。こうしてみると、近い将来、想像以上の数のドローンが空を飛び交うことになるのかもしれない。
2020年代に予定されている都市部での自律飛行の実現に向けては、法規制の緩和など、まだまだクリアしなければならないハードルは多いが、夢物語のように思えていたドローン物流が、着実に現実味を帯びてきたことを実感する発表となった。競合他社の動向も含めて今後も注目していきたい。