KDDIは11月29日、記者会見を開催し、同社のモバイル通信ネットワークを利用したドローン事業における新たな提携や実証実験の開始などを発表した。様々な企業がドローン事業に参入する中、KDDIが持つ強みや、それを踏まえた将来図はどのようなものだろうか。

世界初の完全自律飛行実験に成功

KDDIは同社のモバイル通信ネットワークとドローンを活用する「スマートドローン構想」を掲げている。これまでに通信モジュール関連でクアルコムと、ドローンのハードウェア面ではプロドローン、3Dマップではゼンリンと提携しており、今年3月には運航管理システムの分野でテラドローンと提携。KDDIがスマートドローンプラットフォームと呼ぶシステムの第一期開発完了を宣言していた。

  • KDDIの山本泰常務が登壇し説明。第一期で完成したシステムでは、4Gで接続されたドローンが3D地図を元に運航管理システムのもと自律飛行を行い、ドローンから得られた諸データがクラウドに蓄積・分析されるという流れになる

4月にはLTEによる完全自律飛行実験に成功しており、NEDOが実施する「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」において、ドローン警備のプロジェクトが採択されている。また、10月にはこのシステムを元に、損害保険やトレーニング、操縦代行、運用サービスなどを含めたドローンパッケージの提供も開始している。

そして最新の成果として、新潟県長岡市・山古志において、モバイル通信ネットワークと3D地図を活用した完全自律飛行に、世界で初めて成功したことを明らかにした。

山古志は錦鯉発祥の地としても知られているが、養殖は山の上の棚池で行われている。そこで今回の実験では、4G LTEネットワークで繋がったドローンがドローンポートから発進し、3D地図を使って棚池に薬剤を散布して再びドローンポートに戻るという、総距離約6.3km、高低差約100mのルートを設定。無事に完全自律飛行に成功したということだ。

  • 3D地図上で高度データを含めた航路をマッピングし、そのデータを元に自律飛行を行う。AIによる自律制御が話題だが、実はまだ実用段階にあるものは世界的にもほとんどないのだという

  • ドローンポートの画像,実験に使われたドローンポートの実物。金色の部分は約1cmのメッシュになっており、それぞれ+極と?極が割り当てられている

  • ドローン側には小さな「足」があり、ここがメッシュに触れると充電される仕組み。非接触式充電も可能だが、充電時間などの問題から今回は接触充電を採用したという。スペック的には最大電流は20Aまで出せるとのこと

今回の実験は、スマートドローンが長距離の自律飛行に向けて必要な3D地図による飛行高度の設定と、ドローンポートによる自動充電であり、これらを併用することで安全な長距離自律飛行が可能なことを証明するものとなった。充電時間など問題はまだまだ多いが、100kmを超えるような長距離飛行も現実味を帯びてきたといえるだろう。