バッテリーの製造で幅広い協業も視野
リチウムイオン電池よりエネルギー密度が高く、可燃性の液体が漏れ出す心配がないため安全性も高い「全固体電池」は、トヨタが以前から研究してきた次世代の蓄電池だ。
全固体電池について安部氏は、「先日の東京モーターショーで副社長(ディディエ・ルロワ氏)からも話があったが、2020年代前半には全固体電池を搭載したEVを出したい」との考えを示した。全固体電池は安全性が高いので、冷却装置や電池の監視ユニットなど、安全性のためのデバイスを「よりリーンにできる(無駄を省ける)可能性」があり、そのポテンシャルにも期待を寄せているそうだ。製造を含め課題が多いのも事実らしいが、トヨタとしては前向きに開発を進めているとのことだった。
EVで使うバッテリーについて安部氏は、電池は典型的な装置産業だと指摘した上で、トヨタ単独あるいはグループ内で内製化するのではなく、もう少し広い協業が必要になるのでは、との考えも示していた。
単独開発はビジネス的に厳しいEV
EV開発に向けマツダおよびデンソーと設立した合弁会社「EV C.A. Spirit」については、マツダのクルマづくりを特徴づける「コモンアーキテクチャー」という手法に学びたいという考えを示す。これは、数年先までのクルマを「一括企画」するマツダが採用するクルマづくりの手法だ。安部氏はトヨタ単独でEVを開発しても「ビジネス的に厳しい」と認めた上で、この悩みは各メーカーに共通するとし、その問題を乗り越えるべく協業を進めているとした。
この合弁でトヨタが果たす役割は、HV開発などで培った技術の提供だと考えられるが、安部氏は同社で開発する実際のEVについては企画も出ていないし、どんなユニットをどこで作るかについても現時点で白紙として、多くを語らなかった。
今回の説明会で感じたのは、HVで蓄積した技術を核に、電動化が進む世界でも全方位の姿勢を貫いて存在感を示そうとするトヨタの思いだった。実のところトヨタは、2016年にHVを含む電動車両市場でシェア43%を獲得(トヨタ調べ)した一大勢力でもある。あくまで顧客本位を基本としつつ、今後は充電システムの革新、電池の革新、さらなる協業拡大などを通じ、電動車両の普及をさらに推進していきたいというのがトヨタの考えだろう。