俳優の市村正親が主演を務めるテレビ朝日系スペシャルドラマ『最後の同窓会』が、26日(10:00~11:50)に放送される。物語のスタートは、小学校時代に同級生だったさまざまな事情を抱える5人が集まる、60歳の同窓会。NHK連続テレビ小説『ひよっこ』を手掛けた岡田惠和氏のオリジナル脚本で、"大人たちの青春"を描く。
今作で、皆のリーダーだったのに、今は冴えない定年を迎えたサラリーマンを演じる市村に、撮影現場の様子から、自身の小学生時代まで話を聞いた――。
大人版の『スタンド・バイ・ミー』
――今作のオファーを受け、どんな感想を持たれましたか?
まず脚本を読んだときにね、大人版の『スタンド・バイ・ミー』みたいな雰囲気だなと思って、ワクワクしましたよ。配役を見た時も、でんでんさん、角野(卓造)、片岡の鶴ちゃん(片岡鶴太郎)、松坂慶子ちゃんって、これは最高な同窓会になるなって思ったね。おかしかったのは、でんでんさんが死んでて、松坂さんがギャーギャー言って声枯れちゃったんだって(笑)。大の大人が子供に帰れる作品だなって感じがしたね。
――脚本は『ひよっこ』でも評価の高かった岡田惠和さんです。
岡田さんは、普段の"舞台の市村正親"は、華々しくてカッコいい役が多いから、だらしなくて情けない、惨めなみすぼらしい感じを演じてほしかったみたいです。
――特に印象に残ってるセリフはありますか?
「普通に働いて、普通に定年、普通に結婚して、普通に子供が2人、普通に2人とも独立した。それだけだよ、つまんねぇ普通の人生だよ」って言うのはね、いいセリフだと思いますよ。舞台じゃもっとすごいこと言ってるから、あり得ないよね(笑)
――今回は、子供の頃はリーダー格だったけど、その後は可もなく不可もない人生という役柄でした。
子供の時は「俺は将来すごい人間になるぞ」と思ってたけど、世の中に出ると意外とそうじゃなかったって人って結構いるんですよね。95%はそうじゃないかな(笑)。だから、俺の演じた高槻は、いわゆる普通のサラリーマンの代表のような気がしないでもないんだよね。特にマイナス面はない人生じゃないかなって思うんだけど、彼(高槻)の性格からすると、何かがあった方がいいってなるんですよね。なかなか複雑で面白くて、いい話だと思います。
平成29年度文化庁芸術祭参加 スペシャルドラマ『最後の同窓会』(テレビ朝日系、11月26日10:00~11:50) |
稽古場への移動で地下鉄に乗る
――"普通"の大人の役を演じるのは、長く芸能界にいる市村さんにとっては、難しいことだったのではないでしょうか。
そう! 僕にとって"普通"っていうのは一番難しいかもしれないね。でも、考えてみたら、家にいる時は普通に「おはよう」って言って起きて、普通にお仏壇や神様に手を合わせて、普通にテレビ見て、普通に味噌汁飲んで、普通に自転車乗って、駅まで行って地下鉄乗って、それから稽古場に入って、初めて普通じゃなくなるんだ。
――市村さん、地下鉄に乗られるんですね(笑)
うん、乗ってる! 家から豊洲の稽古場までタクシーじゃ料金がかかっちゃうし、かといって日比谷線の日比谷から有楽町線の有楽町に乗り換えようとすると、あそこ結構階段を上がったり下ったりするから、疲れちゃうんだよね。だから、築地まで行って、そこからタクシーに乗るの。そこからだと、1,700~1,800円くらいなんで、これだけ仕事してたらそれくらいは払ってもいいだろうと思うから(笑)。立ち食いそばも、普通に食べるしね(笑)
――とても庶民的なのでびっくりしました(笑)。今回のように、同年代の役者の皆さんが4人も一緒という現場はあまりないと思うのですが、雰囲気はいかがでしたか?
みんなで「どんな薬飲んでる?」とか「尿酸は高い? コレステロール値は?」という話が多かったね(笑)。でも、鶴ちゃんなんか、仕事やる6時間前に起きてヨガやってるから、一番健康なんだよね。でんでんさんは卓球が趣味で、仕事が終わると卓球のサークルに行くんだって。それぞれの好きなものの話になると、みんな目がキラッキラしてるね! 角野さんとは、お互い半月板の手術した者同士だから、いたわり合いながら(笑)。松坂さんは我々の"水中花"だからね、傍目でチラッと見て「きれいだな…」って思ったりして(笑)。撮影では、いつも車の中に5人押し込まれたけど、楽しかったですよ。