多人数乗車市場での争いは熾烈に

注目したいのは、オーテックの第1弾がミニバンの「セレナ」だという点だ。今回、セレナにはニスモバージョンも加わったので、同じセレナでも通常モデル、オーテック、ニスモの3種類から選択することが可能になったわけだ。

片桐社長はオーテックで想定する顧客層を聞かれ、「クルマ好き」や「スポーティーなクルマを志向する顧客」などのほか、「やむをえずミニバンに乗っている人」にも訴求していきたいとの考えを示した。家族構成などからミニバンに乗る必要があるものの、乗り味やクルマの格好よさにもこだわりたいという顧客層が、ある程度は存在するということだろう。

ミニバンに乗るにしても、乗り味やデザインなどで、人とは違うクルマを選びたいという需要は多そうだ

思えばトヨタ自動車は先頃、スポーツカーの新ブランド「GR」を立ち上げた際、ミニバンの「ノア」と「ヴォクシー」にも同ブランドを対応させて、ミニバンに新たな価値を持たせる方向性を打ち出した。一方でマツダは、3列シートのSUV「CX-8」を発表し、ミニバンに代わる選択肢を提示して新たな市場の創造に挑戦している。

ミニバンに代わる新たな選択肢としてマツダが提示する「CX-8」(画像)は受注好調が伝えられる

日産がオーテックの第1弾に「セレナ」を選んだのが、トヨタとマツダの動きを視野に入れた意図的な動きだったのかどうかは分からないが、少なくとも、“やむをえず”ミニバンに乗っている父親世代を狙った動きが各社から相次いだことは興味深い。日産の広報によると、「セレナ NISMO」にも悪くない反応があるそうなので、“高付加価値ミニバン”および“ミニバン代替SUV”の市場は、かなり大きいのかもしれない。