ただ、ガバナンス・コードはあくまで「規範」であり、一律の評価軸が存在するわけではない。そのため、企業それぞれの経営課題、業界環境などにあわせ、インタビューやアンケート項目が作られる。ラッセル・レイノルズの例では、「企業戦略」や「取締役会の構造及び運営方法」「取締役メンバーと構成」「取締役会カルチャー」といった主な要件で70の質問項目を用意する。

質問の内容は、取締役会のメンバーがしっかり協力できているのか、サクセションプランが制定されているのか、取締役会におけるアジェンダが適切なのか、取締役と経営陣の意思疎通が出来ているのかなど多岐にわたる。

「我々は、日本だけでなく世界の同業他社とのベンチマークがある。機関投資家のレビューシートや取締役、経営陣のインタビューなど、細かい内容のニュアンスの違いも把握して、それぞれのクライアントの強み、弱みを捉えることが大切だ」(O'Kelley氏)

ラッセル・レイノルズによる外部評価は、評価プロセスの明確化とそのレポーティングの結果として改善案も含めて一貫して伝える。「(インタビュー前夜に会った)ある上場企業の取締役会議長は、評価プロセスを高評価していた。『単なるアンケートのチェックボックスだけでなく、直面するビジネス課題に対して何をすべきなのかを考える上で、サーベイ以上の結果をもたらした』と喜んでいた」(O'Kelley氏)

取締役会は近年、社外取締役を取り入れることで透明性を担保する事例が増えてきた。こうした外部評価のあり方は、一面的ではなく多面的な企業の信用度、評価へとつながっていくとO'Kelley氏は強調する。

「特に日本企業は、機関投資家に対する見解を変える必要がある。彼らは、取締役会に対して株主への説明責任をより求めるようになる。長期的なコミットメントを支持しないとなれば、取締役会は責任が重くのしかかる。だからこそ、投資家のマインドをよく理解した取締役会になっているのか、CEOが策定した経営計画に対して役割を果たせているのか、企業のダイバーシティが保たれているのかなど、時代に合わせた取締役会のあり方を考えなくてはならない」(O'Kelley氏)

世界のベストプラクティスがあるからこそ作れる「取締役会の評価」

インタビューの最後に、改めてO'Kelley氏にコーポレートガバナンス・コードの重要性について尋ねると、単なる外部評価だけではない3つのポイントを挙げた。

  • 株主に変わって経営・監視するグループの設置
  • 執行役側に立った、洞察やガイダンスの提供
  • CEOに対する監督

取締役会はCEOの選任や、場合によっては解雇するものだ。その大きな役割を果たすためには、正しい評価基準を、時代に沿った形で行使できる取締役会でなくてはならない。その基準の「ベストプラクティス」を作り上げているのがラッセル・レイノルズだ。

「社外取締役を含め、『自分たちが会社に貢献している』『変化を起こしている』という実感を得られるようにするのが、私たちの率直な洞察(インサイト)だ。世界中のベストプラクティスをもって、機関投資家がどのように企業を見ているのか、取締役会に向けて提供できるのが我々の強みだ」(O'Kelley氏)